研究課題/領域番号 |
19K00619
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
江口 正 福岡大学, 人文学部, 教授 (20264707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 活用形態論 / 同音衝突 / 終止形のモーラ音素化 / 最適性理論 / 九州方言 / 関西方言 |
研究実績の概要 |
本課題は西日本方言に広く見られる否定の「ン」と、動詞終止形の撥音化との同音衝突とその回避について調査を行い、理論的な説明を進めることを目的にし たものであった。 しかしコロナ禍によって2020年度に予定していた方言調査はすべてキャンセルとなった。そのため、現在手元にある30年前の宇佐方言の談話録音データを精査して関連事象のデータをピックアップし、データベース化する作業を進めた。その過程で注意すべき文末表現がさらに見つかり、調査対象が増えた。 また、「日本語諸方言コーパス」を利用して九州各地の方言の文末表現を整理する作業も進めた。このコーパスは音声もついているため、詳細な研究が可能になり、実際の撥音化の様子もよくわかるようになった。 また、佐賀方言話者に電話で調査を行った結果、撥音化の条件と撥音化しない条件とが単独言い切りと終助詞付きとで相補分布の関係にあることがわかった。これによって「見る」の否定形が「ミラン」だけでなく「ミン」もあることに説明がつけられるようになった。この事実は、否定形が2種類ある地域で文脈付き自然談話を取る必要があることを示している。 それらの成果は「方言動詞の活用システムと同音衝突 ―否定のンと終止形の撥音化―」と題して国立国語研究所主催のシンポジウム 「日本語文法研究のフロンティア ―日本の言語・方言の対照研究を中心に―」で発表した。また、遠隔授業や遠隔調査で得た技術について「オンライン授業として展開する日本語学」と題して日本語文法学会のチュートリアルで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染対策のため、予定していた方言の臨地調査が全くできなかった。このままでいくと対面調査はワクチンが行き渡るまでできそうにないため、対面調査以外の方法を構築する必要がある。 コーパス調査による研究は順調に進んでいる。しかし対面調査でなければわからないことも多くあり、思うようにデータが集められていないのが残念である 研究成果の発表については、昨年の年度末に予定されていたシンポジウムが今年度にずれこんだため、発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記したように、現在の状況のままでは対面調査をじっくり行うことは困難である。従って、対面でない調査法を早急に構築しなければ ならない。被調査者に録音・録画を依頼する、web会議の機材を送って相手をしてもらうなどの方法を考えている。その方法や他の研究者とのデー タの共有によってデータを収集して研究を進めたい。学会や研究会がオンラインによって行われるようになり、出張費を使う必要がなくなったため、従来よりも多くの会合に出席できるようになった。利用を勧めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の予算は全面的に方言調査旅費および学会発表旅費に使用する予定だったが、コロナ禍のため、どちらも使用することができなかった。 今年度前半は出張はあきらめ、通信機器によるweb会議システムを利用した調査を行うことに変更する。そのため、インフォーマントに送る機材を購入し、適切にセッティングして送り、さらに使用後は送り返していただくことで調査を進める。
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