研究課題/領域番号 |
19K00638
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
岩田 美穂 就実大学, 人文科学部, 准教授 (20734073)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 並列 / 副詞句 / 量 / 名詞句 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、各並列形式の変遷の個別性と共通性の考察を行った。まず、準備段階として、並列形式の整理を行った。現代日本語に見られる並列形式は多岐に渡るが、並列機能を中心的に持つヤ、タリ、ヤラ、ノダ、トカ、ナリに形式に絞り、対象とした。本研究では、量性を持つこと即ち「並列する」機能自体が構造変化の契機となっていることを示す必要があるため、他の機能を持つ形式は排除した。 これらの形式に共通する変化として、(ⅰ)全部列挙を表す形式が上代から存在するのに対し、例示を表す並列形式の発達が遅れること、(ⅱ)形式の出自は、間投助詞、活用語(助動詞)の終止形、終助詞の3つに分けられること、(ⅲ)統語的な特徴として付加節または引用節を形成する要素であったこと、が明らかとなった。 (ⅱ)、及び(ⅲ)の結果が本研究にとっては重要な成果である。並列とは元来、語ないし句を単純に並べ立てることによって成立する。(ⅱ)の結果は並列形式がいずれも文ないし句の最末尾に現れる形式であったことを示している。つまり、並列形式はもともと単純な語・句の並べ立てが行われていた際に、末尾に現れていた形式であるといえる。この段階で、並べ立てられた語・句を一要素として、全体が集合を表す含意が生じることとなる。並列された語句がひと塊である事物の内容(量)を表す含意が生じたことにより、並列句の塊がその集合の外延を表す名詞句や述語句そのものに付加されるようになったことを示しているのが(ⅲ)の結果である。このⅲの段階を通してそれぞれの末尾に現れる要素が、並列そのものを表す要素として固定化していったものが現在の並列形式であると推測できる。 これらの並列形式の変化に共通の方向性があること自体がこれまでほとんど指摘されていなかったことであり、その点で本研究の成果は重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
用例の収集、検討に計画していたよりも時間がかかってしまったため。研究そのものの進展は、ほぼ計画通りの段階に進んだが、年度内に成果の発表を実現させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果を発表し、実績をあげる。 次の段階として、限定を表す形式名詞が条件形式となる過程の考察を進める。特にギリ・カギリを対象とする。ギリやカギリはもともと限界点を表すが、量的に小である限界点を表すことで「限定」の意味が生じ、更に「ギリニ」「カギリニ」助詞「ニ」を付して副詞句として用いられるようになることで、条件節のように解釈されるようになることを示す。時空間を含めた量性を視野に入れることで、形式名詞から副詞句への変化を説明する。ギリについては用例収集が終了しており、考察の段階に入る。カギリについては、資料から用例の収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
用例の収集が遅れたことにより、予定していた資料の購入が本年度できなかったことによる。また、学会への出張を予定していたが、都合により出張できなかった。資料については、既に次年度の購入に向けて、準備を進めている。
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