研究課題/領域番号 |
19K00663
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
太田 聡 山口大学, 人文学部, 教授 (40194162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭文字略語 / 複合語 / アクセント |
研究実績の概要 |
令和3年度は、令和2年度に続けて、略語――特に頭文字略語(initialism)――の形成プロセスや特徴について、音韻的な面に注目しながら研究を行った。例えば、NHK (←Nippon Hoso Kyokai)、PC (←personal computer)などは、元々は複合語であるものの頭文字を取り出しているが、アクセントは複合語規則に従っていない。これらの頭文字語では、「K」や「C」にアクセント(↓で表す)が置かれ、「エヌエイチケ↓イ(エネーチケ↓ー)」、「ピーシ↓ー」となる。しかし、通常の複合語は、例えば「レーシング↓カー」のように、後半要素が「カー」のような1音節(2モーラ)しかない短いものの場合には、それよりは前にアクセントが与えられる。また、単純語の場合にも、例えば「エスキ↓モー」のように、最終音節よりも前にアクセントが与えられる。よって、従来の研究では、頭文字略語のアクセントはどのような規則に従っているのかが不明とされてきた。しかしながら、頭文字略語のアクセントは「最後の文字が(主な)アクセントを担う」という独自のものであるとすべきであり、このことは、英語などの他の言語の頭文字略語にも当てはまることを論じた。さらに、FM(エフエム)のように合計4モーラの長さから成り、後半が「エム」のように短い音節が2つ並んだ場合には、アクセントが平板型(無アクセント)になるというのが頭文字略語の特徴であり、このパターンは、単なる省略形の場合とは異なることを指摘した。例えば、「彼女のイニシャルはFMだ」のように、そのときだけ臨時で作る省略形であれば、「エフエ↓ム」といったアクセントをつける。こうしたことから、頭文字略語形成は一種の語形成――新たな語を作ること――であり、単に語を短くしているだけではない、という主張を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
略語に関する研究は十分に行えたが、予定していた混成語の統計分析が計画したようには進まなかった。また、コロナ禍で出張が全くできなかったため、研究打ち合わせや学会参加・発表を計画通りに行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まだ十分に取り組めていない混成語のデータに関する統計分析を行なった上で、これまでの語形成に関する研究成果をまとめ、書籍として出版する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染がいまだ収束せず、出張(特に海外出張)が全くできなかったため、旅費が未使用となった。また、計画していた被験者を募っての実験とそのデータ分析もできなかったため、人件費・謝金も未使用となった。令和4年度は、できるだけ多く学会・研究会に参加したいが、海外出張が難しい場合には、旅費を物品費に充てることにし、物品費と人件費・謝金を計画的に執行するようにする。
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