研究課題/領域番号 |
19K00723
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北出 慶子 立命館大学, 文学部, 教授 (60368008)
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研究分担者 |
村山 かなえ 立命館大学, 国際教育推進機構, 嘱託講師 (10589948)
安田 裕子 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (20437180)
遠山 千佳 立命館大学, 法学部, 教授 (40383400)
山口 洋典 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (90449520)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多文化サービスラーニング / 省察 / 越境的学習 / 日本語教育人材 / ナラティブ / 中道態 / ジレンマ |
研究実績の概要 |
2019年度は主に以下の4点において成果を出すことができた。まず、フルメンバーにて2回の研究会を実施した。2019年12月には「中動態と加速主義「ブロメテアニズム」」にて立命館大学の増田展大先生やプロジェクトメンバーの山口洋典氏の講義にて研究会、2020年2月にはICUにて長年、国際サービス・ラーニングの実務を担ってこられた黒沼敦子氏の講演会を実施した。研究会を通し、プロジェクトの鍵となるサービス・ラーニングの教育哲学、中動態、ブロメテアニズム、越境的学習、対話的学び、などの意味に向き合い、大衆文化消費社会や高度情報社会といった現代社会におけるサービス・ラーニングや多文化共修の意義を捉え直すことができた。 次に、学会でのパネルやフォーラムなどの共同発表である。2019年7月の「第4回日本サービス・ラーニング・ネットワーク全国フォーラム」、2020年2月の「国際ボランティア学会学術大会」、3月の「言語文化教育研究学会 第6回年次大会」にてプロジェクトメンバーと協力のもと発表を行った。この2つの発表により、UNESCOが提唱したStory Circlesという異なる背景を超えた省察方法の試行、および「越境的学習」という観点から多文化サービス・ラーニングの捉え直しが実現した。 3つ目に、多文化サービス・ラーニングプロジェクトのメンバーで特集号を組み、「立命館言語文化研究」にて4人それぞれ論文を掲載した。 最後に、地域の連携先開拓が挙げられる。地域の日本語支援・多文化保有者への支援取り組みをしている団体・機関と連携に着手した。亀岡の外国人児童生徒と保護者への日本語支援、大阪YMCA、京都YWCAでの日本語支援ボランティア、などの担当者と調整に入ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に取り組むべき研究課題としては、「多文化ボランティアを通した学びの明示化」と「学際的連携基盤の確立」がある。一つ目については、今回、サービス・ラーニングの教育哲学や設計については本プロジェクトの土台となる知識をメンバーで共有し、理解を深めることができた。また、日本国内での多文化間のボランティアの取り組みについては、まずは論文の系統的レビュー紀要論文としてまとめ、多文化ボランティア、サービス・ラーニング、日本語教育人材育成、の3つの接点を見出すことができた。二つ目については、学際的メンバーで研究会を2回、学会でのパネルやフォーラム機会を3回実施する中でお互いの専門性についての学び合いが実現し、有機的な繋がりへと発展している。さらにメンバーの山口氏の繋がりで教育心理学・教育社会学の越境的学習専門家との協力も実現できた。 しかし、データ収集に関しては、新型コロナウィルスの影響により2019年度2月と3月に学内での越境経験の場であるBeyond Borders Plazaの参加経験学生にインタビューをする予定であったが、中止となった。データ収集に関しては、新型コロナウィルスの感染が収束し、対面が可能になった時点で再開していく。また、再開時期が現在の時点では見通しが立たないことから、長引く場合はzoomなどを通したオンラインでのインタビューに切り替えて実施することにする。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度については、当初の予定では、2021年度の「多文化SLのカリキュラム設計・評価と成果発信」の準備としてデータ収集と分析、国際学会での発表、国際研究会を開催する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により2020年前半の国際学会が2021年に延期になったり、対面が禁止されインタビューが中止になったりといった事態になっている。これにより、国際研究会については2020年後半期にオンラインで実施できるように進める。また、インタビューについてもオンラインで可能な限りのデータ収集をしていく。2020年前半期は、当初の予定通り、ナラティブを中心としたデータ収集方法や多文化ボランティア経験者の省察方法についてオンラインを中心に計画を進める。 加えて、多文化SLのカリキュラム設計のためのガイドブック作成に向け、多文化や多様性に関する教育や支援で課題となるジレンマに着目する。ジレンマは、多様性を前提とした教育や支援で正視しなければならない点であり、参与者の成長を考えるデータ分析においても重要となる鍵である。多様性や多文化共存の課題は、ローカルレベルだけではなく、広く身近なコミュニティやマクロレベルのイデオロギーや政策という多元的な社会領域を含めた包括的な視野が必要となる。しかし、現場、コミュニティ、政策といった領域間における葛藤は、避けることができない。本プロジェクトでは、表面的な多文化理解だけではなく、そのようなジレンマを正視できる人材の育成の具体的設計を目指し、今年度の国際研究会を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染予防により、2020年2月から3月の学会と研究会がキャンセルになり、出張費が執行できなくなった。また、2020年2月から3月に実施する予定であったインタビューデータ収集においても同じ理由により中止となった。 2020年度には、2019年の残高分と合わせてオンラインでのデータ収集および研究会実施に使用する。
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