研究課題/領域番号 |
19K00727
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
市嶋 典子 秋田大学, 高等教育グローバルセンター, 准教授 (90530585)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語意識 / 難民 / 移民 / 市民性 / 平和構築 / アイデンティティ / 実践研究 |
研究実績の概要 |
シリア内戦は、アラブの春が波及する混乱の中で生じ、現在まで続いている。国際交流基金(2018)の「海外日本語教育機関調査」によると、現在、シリアでは、日本語教育の実施が確認できていない。2015 年度の調査時点では、ダマスカス大学とアレッポ大学の2つの大学での実施を確認しているが、内戦下の苛烈な情勢もあり、その後、新規入学生の募集停止、閉講状態となっていることが報告されている。一方で、シリアには、「忘却された日本語学習者」が存在し、彼/彼女らの中には、内戦という困難な状況においても、日本語を自身のアイデンティティの一部、未来へとつながる希望とみなし、学び続けることを望んでいる者もいる。シリアでは、日本語の社会的需要が小さく、日本語を学んだからといって、必ずしも就職や進学につながるわけではない。また、内戦状況下において、日本語が生活に直接的に与える影響はほとんどない。それにも関わらず、学習者らは、なぜ日本語を学び続けるのか。 本研究では、内戦前から現在までの長期にわたる調査により、シリアの日本語学習者の置かれた環境の実態と、シリアの日本語学習者がどのように日本語を意味づけているのか、さらに、彼女らのアイデンティティの構成に日本語がどのように関わっているのかを明らかにした。具体的には、シリア国内で日本語を学び続ける日本語学習者、海外に難民として移住し、日本語を学び続ける日本語学習者へのインタビュー調査により、ことばを学ぶことの意味とアイデンティティの関係を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19の影響により、当初予定していた、中東地域、ヨーロッパ、日本国内にいるシリア出身の日本語学習者の日本語学習環調査を十分には実施できてない。代替案として、ZOOMによるインタビュー調査を実施したが、十分なデータを収集できているとは言い難い。また、シリア国内の日本語学習者へのインタビューについては、シリア国内の情勢、電気の供給が不安定なため、予定していた回数は実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
COVID19の状況を鑑みた上で、中東地域、ヨーロッパ、日本国内にいるシリア出身の日本語学習者の日本語学習環調査を実施する。現地での調査が難しい場合、引き続き、ZOOMによるインタビューを実施する予定である。また、日本国内に定住しているシリア出身の日本語学習者に関する調査については、国内移動が可能になり次第、再開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響により、当初、予定していた旅費、人件費/謝金を使用することができなかった。COVID19の状況が改善され次第、まずは日本国内での調査を再開し、できれば海外での調査も実施したいと考えている。
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