研究課題/領域番号 |
19K00727
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
市嶋 典子 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90530585)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 言語意識 / 難民 / 移民 / 市民性 / アイデンティティ / 実践研究 / 複言語 / 複文化 |
研究実績の概要 |
本研究では、海外に難民、移民として移住したシリア出身の日本語学習者、シリアに留まり日本語を学び続ける日本語学習者の日本語学習環境の実態とアイデンティティ形成過程について考察した。具体的には、以下の3点を明らかにした。 ①移住地やシリアでの生活状況および日本語学習環境の実態②海外に難民、移民として移住した日本語学習者は,移動に伴う言語環境の変化,社会的・政治的状況によって,アイデンティティにどのような影響が与えられ,それらはいかに形成され,変容してきたのか。また、シリア国内に留まり、日本語を学び続ける日本語学習者のアイデンティティにはどのような変化が見られるのか③上記を総合的に考察し,難民・移民のための日本語教育実践モデルの一試案を示す。 これらの問いに答えるために,シリア出身の日本語学習者のライフストーリーを分析した。また、難民、移民として移住した日本語学習者やシリアに留まり日本語を学び続ける日本語学習者の生活状況、日本語学習環境について、口述により記録し、問題点を明らかにした。これらの調査結果を踏まえた上で,日本語教育実践モデルの一試案を示した。 日本語教育実践モデルについては、引き続き、実践研究を重ねることにより、新しい日本語教育としての視座を見いだしていきたい。また、シリアにいながら、自学で日本語を学び続ける日本語学習者については、長期に渡りインタビュー調査を実施することにより、彼/彼女らの言語意識の変化を追うことができた。その中で、日本語学習者の中に、複言語能力、複言語意識が芽生えつつあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、海外に難民、移民として移住したシリアからの日本語学習者の移住先に赴いて調査をする予定であったが、コロナ禍の影響もあり、十分には実施できなかった。一方で、オンラインによる調査を可能な限り実施した。ヨーロッパ、日本に難民として移住した日本語学習者については、オンラインで複数回、インタビューを実施することができた。また、シリアに留まり、日本語を学び続ける日本語学習者についても、オンラインにより、複数回、インタビューを実施することができた。しかしながら、シリアの日本語学習者については、電気の供給が不安定なこともあり、インタビューのできる時間が限られていたため、十分にデータがえら得ているとは言い難い。引き続き、インタビュー調査をすすめ、インタビューデータの収集を充実させてきたい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、オンラインによる聞き取り調査を実施する。また、可能な限り、日本語学習者の移住先にも訪れ、聞き取り調査を行いたいと考えている。そのことにより、日本語学習者の生活環境や言語学習環境がより詳細に把握できると考える。また、シリア在住の日本語学習者へのインタビュー調査については、対象者を拡大した上で、調査をすすめていく予定である。また、シリアから日本に国費留学生として移住した日本語学習者にも複数名、インタビュー調査を実施する。インタビューデータの内容については、デュオエスノグラフィーの理論と方法を踏まえた上で分析し、考察を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、海外フィールドワークが実施できたかったため、次年度使用額が生じた。今年度、可能な限り、海外フィールドワークを実施し、研究内容を充実させることを目指す。フィールドワーク先には、日本国内の他、ヨーロッパ、中東地域を予定している。また、シリア在住の日本語学習者については、オンラインによるインタビュー調査を継続して実施する予定である。現在のところ、3名の日本語学習者と継続的にインタビューを実施しているが、対象者を拡大した上で、引き続き、インタビュー調査を実施する予定である。インタビューの音声データについては、文字おこしの業者に依頼した上で、文字化する。なお、音声データは、日本語、英語、アラビア語によるものである。
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