• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

シリア出身の日本語学習者の学習環境とアイデンティティ形成過程の動態について

研究課題

研究課題/領域番号 19K00727
研究機関金沢大学

研究代表者

市嶋 典子  金沢大学, 国際学系, 教授 (90530585)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワード言語意識 / 難民 / 移民 / 市民性 / 平和構築 / アイデンティティ / 実践研究 / 複文化
研究実績の概要

本研究では、海外に難民、移民として移住したシリア出身の日本語学習者、シリアに留まり日本語を学び続ける日本語学習者の日本語学習環境の実態とアイデンティティ形成過程について考察した。その上で、日本語教育実践の試案を構築した。
2023年度は主に、シリアに留まり日本語を学び続ける日本語学習者、日本在住のシリア出身の日本語学習者にインタビューを実施し、彼、彼女らの生活状況や言語意識、日本語とアイデンティティの関係を考察した。シリアに留まり日本語を学び続ける日本語学習者は、日本語を、平和時の経験と記憶が内在したものであり、その経験と記憶を想起することで、自身の存在意義を確認していることが見られた。さらに、日本語は、生きがいのある日常をつくる媒体であり、内戦状況下においても、日本語を学ぶという営みを続け、内戦とは異なる日常を構成し、維持しようとしていた。また、内戦状況下、日本語学習を断念し、ドイツ語やフランス語など、他の言語学習へとシフトし、その後、日本語学習を再開するという事例も見られた。複数の言語を学ぶことで、自身らの将来への希望をつなぎ、内戦状況下の困難を乗り越えようとしている姿勢が明らかになった。
これらの調査結果を踏まえた上で,日本語教育実践の試案として「活動型日本語教育」を示した。「活動型日本語教育」においては、ローカルな場での言語や社会文化、政治の特殊性を理解し、それにもとづいた文脈を重視した教育が必要であることを主張した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

主に、シリアに留まり、日本語を学び続ける日本語学習者に、オンラインにより、複数回、インタビューを実施することができた。同一人物に複数回、インタビューを実施することで、学習者の生活環境や学習環境の変化、それに伴う、言語意識やアイデンティティの生成過程を縦断的に考察することができた。一方で、シリアは、依然として、電気の供給が不安定なこともあり、インタビューのできる時間が限られていた。引き続き、インタビュー調査をすすめ、インタビューデータの収集を充実させてきたい。

今後の研究の推進方策

収集したインタビューデータを分析、考察した上で、発表や講演を行い、研究成果を広く周知していく予定である。また、日本語教育実践の試案についても、実践研究を重ねたうえで、より精緻化していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初、海外に難民、移民として移住したシリアからの日本語学習者の移住先に赴いて調査をする予定であったが、治安状況やコロナ禍への懸念もあり、十分には実施できなかった。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 彼/彼女らはなぜ日本語を学び続けるのか―シリア難民アリの場合から2024

    • 著者名/発表者名
      市嶋典子
    • 学会等名
      非営利型一般社団法人日本語まなびサポート北陸設立記念講演会
    • 招待講演
  • [図書] 「シティズンシップとことばの学び―シリア出身の日本語学習者の語りから」『ことばの教育と平和―争い・隔たり・不公正を乗り越えるための理論と実践』2023

    • 著者名/発表者名
      市嶋典子
    • 総ページ数
      27
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750355795
  • [備考] 市嶋典子

    • URL

      http://ichishima.thyme.jp/index.html

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi