研究課題
コロナ禍における授業対応および本科研費以外の研究課題(研究発表欄に記載した海外学術図書の分担執筆)等が重なり、当初の計画よりも大幅に遅れが生じてしまったが、現時点までの成果を以下の通り報告する。大学生にとってどの英文法項目が難しいのかを検証し処理可能性理論と比較するために、筆記テスト(穴埋め問題)、英文復唱テスト、誤文訂正テストを実施した。参加者は214名であるが、全種類のテストを受験したのは159名である。214名の全データにラッシュ分析を行い、10項目のデータを抽出し処理可能性理論(以下理論とする)と比較した。まず、筆記テストでの難易度順は理論とは一致しなかった。これは理論が自然な発話をベースにしたものであることから当然であると言える。次に英文復唱テストであるが、文法的に正しい文と間違いを含む文とでは間違いを含む文の方が難易度が高かったため、正しい文と間違いを含む文を分けて比較したところ、ともに処理可能性理論で最も難しいとされる第6ステージの2項目が復唱テストにおいても難易度が高く、次に比較的易しいはずの第2ステージの2項目、そのあとに第4ステージと第5ステージの項目が混在し、第3ステージの2項目は難易度の順位が大きくわかれるという傾向が見られた。つまり復唱テストにおける難易度順も処理可能性理論の順序とは一致せず、復唱テストは自然な発話と同様のデータを集められるという先行研究とは異なる結果となった。なお、復唱テストで用いた間違いを含む文を誤文訂正テストとして解いた場合の難易度順は穴埋め問題の難易度順と類似していた。今後の課題の1つとして明らかになったのは、復唱テストの採点方法である。例えば、ある1文で言えなかった文法項目Xが別の文法項目Yを見るための文で言えた場合、文法項目Xはわかっているとして別途加点すべきなのか等である。さらなるデータ分析とともに考察したい。
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