研究課題/領域番号 |
19K00954
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 幸司 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (30364128)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 相良氏 / 博多 / アジア / 港市 / 外交 |
研究実績の概要 |
本年度は、論文としては、肥後相良氏の外交活動について考察をした。具体的には、肥後相良氏の外交活動にかかる先行研究を網羅的に整理した上で再構築し、新たな知見を交えて概要を述べた。 さらに、西国大名が覇を競ってその支配をもくろんだ都市博多にかかる著書を刊行した。博多は、中世日本におけるアジアへの窓口であり、アジアにおける日本への窓口であった。アジアの海商が来航する博多での貿易活動は、民間取引や国家外交など、多様で広範な国際交流のなかで展開されていた。また、博多で展開する宗教勢力は、こうした国際交流と密接不可分の状況で展開し、その影響はネットワークを通じて広く列島の各所にも及んでいた。著書では、中世博多を最も特徴付ける要素と考える「貿易」と「宗教」という2つの視角から俯瞰的に考察し、中世日本最大の国際貿易港であり、東アジア海域有数の港湾都市であった博多の実像に迫った。 本研究にかかる直接的な成果としては、著書のなかの序章「中世博多研究の潮流」、第一章「港町複合体としての中世博多湾」、第四章「中世後期の博多とアジア」、第五章「宗教都市博多の中世」、第九章「博多聖福寺と臨済宗幻住派」、第十章「聖福寺古図と承天寺古図―描かれた戦国時代の博多―」、終章「アジアのなかの港市博多」が該当する。あわせて、著書では、戦国期の数少ない文献史料でありながら長らく未翻刻のままとなっていた湖心碩鼎の語録『頤賢録』を全文翻刻した。当該史料には、本研究で考察対象としている地域権力も登場している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、出張による資料調査等の活動に大きな制約があるが、一方でじっくりと思考できる時間を確保することができたため、書籍など関係史資料を充実させ、出張しなくいても可能な考察を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
室町幕府と西国諸氏のアジア外交の比較史的検討をまとめようと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、研究計画当初に予定していた出張調査ができなかったために残金が発生した。2021年度も2020年度と同様、コロナ禍が続いた場合、2022年度に事業計画の一部を移行し、当該経費も繰り越す予定としている。
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