研究課題
基盤研究(C)
本研究では、郡家・国府・城柵といった古代地方官衙の機能を、都鄙間・隣国間などの広域的な政治的交通との関わりに注目して再検討をおこなった。具体的には、正税帳などの律令公文類や、『朝野群載』などの公文書文例集に掲載された、使者の派遣時に発行される任符などの文書の分析を中心に研究を行い、さらに交通に関わる木簡・墨書土器などの出土文字資料や官衙遺跡に関する知見を加え、地方官衙における使者への便宜供与を行うシステムを具体的に明らかにし、地方官衙が交通・流通の拠点として果たした役割を解明した。
日本古代史
日本古代における地方官衙のあり方を、地域支配との関わりという視点だけでなく、地域を越えた国家支配との関わりという視点から捉え直すことで、都鄙間交通にかかる拠点・施設をこのような地方官衙の機能や変遷をも視野に入れて総体的に把握し直した。木簡などの出土文字資料を活用した研究成果を踏まえることで、従来より指摘されながら十分に深められていない地方官衙の「交通機能」の理解を深めた。そのことを通じて、古代国家・社会を支える都鄙間交通と地方官衙の関係を把握し、都鄙間関係の政治的特質を明らかにした。