研究課題/領域番号 |
19K01024
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
青木 敦 青山学院大学, 文学部, 教授 (90272492)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慶元条法事類 / 法制史 / 宋代 / 文書令 / 勅令格式 / 天聖令 / 唐令 |
研究実績の概要 |
『慶元条法事類』を中心に、宋代敕令格式条文の具体的内容について引き続き解読を進めた。唐宋時代諸法典には『唐律疏義』のようにほぼ伝存しているもの、『天聖令』などある程度残されているものがあるが宋の敕令格式はまとまって残されていない。本研究では申請者がこれまで確立した電子データ利用システムを用いてこの作業を進めているが、本年度はこのシステムを整備・維持しつつ、『慶元条法事類』に基づいた南宋の敕令格式の復元を進めてきた。そしてことに慶元文書令についての解析作業の完結を見、(単著)「慶元文書令譯註稿」『青山学院大学文学部紀要』62, 2021.3として発表した。 内容的に提示し得た、特筆すべき事実は、従来、仁井田陞以来、川村康、趙晶などによって行われてきた『慶元条法事類』所載諸条文の総計に訂正の必要があることである。具体的には、卷32財用門「點磨隱陷」に見える文書45~53のうち、46以降は文書令ではなく賞令であることを発見した。52・53は明らかに賞令であるが、更に隱落を見出した者への褒賞を論じた政和の議論にも登場する50~52を含め、46~53は等しく帳・簿についての規定ではなく根磨、驅磨點檢、審磨についての賞令であることが明らかとなったのである。 また1~3の3條は、『禮部韻略』に紹煕重修文書令として見え、四庫全書本と異なり、紹定庚寅上巳重刋の同書に載せる「淳煕重修文書式」は廟諱に寧宗諱を含んでおり、また今上皇帝御名として理宗の諱・舊名を掲げるから、これは紹定間の格であろうことが示された。 さらに、宋代にしばしば見られる「書檢するも繋銜せず」という規定が、『建炎以來朝野雜記』乙集卷一一故事「從官典藩於制司不用申状」に見られる規定の流れの上にあり、そこに宛先の司の官が独員であれば汎用性の高い牒を用いることが定められていることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
20年度は諸状況によって予定されていた海外出張・国内出張、研究所(東洋文庫等)における文献複写を行わなかったが、19年度までに導入した諸設備により十分な研究が可能であったため、概ね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては図書館・研究所等の利用が20年度より改善される可能性があるが、20年度までに整備し得た設備も利用できるため、これらを用いて蓄積したデータの分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
20年度には、諸状況によって海外出張、国内出張などを行わないなど、当初計画より執行が少なかったが、その分21年度に行う予定であるため、次年度使用額が生じた。
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