研究課題/領域番号 |
19K01132
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
朽津 信明 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (50234456)
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研究分担者 |
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (50466645)
西山 賢一 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60363131)
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (00392548)
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
片山 葉子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (90165415)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 年間積算照度 / 波長制御 |
研究実績の概要 |
2021年度は2020年度に増して長期間にわたって緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されており、鍾乳洞における現地調査や現地実験を行うことがほぼ不可能なまま推移した。このため、当初計画通りに研究を終了することは不可能と判断し、一年間の延長を行うこととした。2022年度に社会情勢が改善されれば、そこで研究終了となる見込みである。 2021年度の成果としては、現場に行けていた時期に風連鍾乳洞で採取してあった照明植生を単離・培養して室内実験を開始しており、通常の鍾乳洞を想定した照明環境を実験室で与えることでそれが増殖することが確認できている。これに基づき、光合成を行いにくいと想定される照明を用いて同様の照度環境を与えることにより、増殖を制御できるかどうかという実験に進むことができると考えられる。 また、現地調査を行うことができていた時期に取られていたデータを解析することにより、洞窟において照明植生が繁茂する条件についてより具体的に提示することが可能となった。かつては、十分に水が供給される環境で年間積算照度が10の5乗lxhを超えると照明植生の繁茂に繋がるとしていたが、茨城県の直牒洞における実測に基づいて、5.44×10の4乗 lxh以上の光が与えられると、10の4乗のオーダーであっても目視で確認できるレベルで照明植生の繁茂を誘発する可能性があることが明らかになった。2.06×10の4乗 lxh以下を目安にすれば、照明植生を押さえられるという目安を新たに設定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来は2021年度までで現地実験を終えて研究を終了している予定であったが、2020年度の段階でコロナの影響で現地に行くことが困難となって実験をスタートできておらず、予定通りに研究を終了することができなかった。2021年度にも現地実験に入ることができなかったため、本研究で現地実験を完了させることは困難であると判断するに至った。しかし、一般論として照明植生を軽減可能な年間積算照度の条件は既に把握できており、また、照明植生を軽減させる目的で、特定の波長光のみの合成によって白色光を出す光源を作成できている。このことから、2022年度まで研究を続ければ、研究は終了できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究内で現地実験まで完了することは既に断念してあるため、本研究で作成してある「照明植生を軽減する白色照明」にさらに改良を加え、より照明植生を繁茂しにくくする照明を作成することを第一目標とする。そしてその新たな照明を用いて、既に単離してある風連鍾乳洞で採取された照明植生を用いて、通常の白色光源と対比しながら同一条件で室内実験を試みる。これにより、照明の工夫と照射条件の改良で照明植生の繁茂を軽減できることが室内実験で確認できれば、それが本研究の成果となると期待される。その際には、室内実験時の照射条件から、実際の鍾乳洞に適用することを見通しての、照度や照射時間に関する具体的な運用条件を確定できれば、現地実験までは至らなくても、今後鍾乳洞における照明植生を軽減する具体的な方向性を示せることに繋がると期待される。それをもって、本研究は終了する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で現地調査に行くことが全くできず、予定していた支出が叶わなかった。今年度は積極的に現場に出ることによって、一年遅れではあるものの、内容的には研究当初の計画通りに執行できる見込みである。
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