研究課題/領域番号 |
19K01173
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
祖田 亮次 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (30325138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アブラヤシ / マレーシア / サラワク / 小農 / 認証制度 / フロンティア / 生産者団体 |
研究実績の概要 |
本研究は、プランテーションによるアブラヤシ栽培および同関連産業と小農(とくに内陸先住民)によるアブラヤシ栽培との関係性を念頭に置きつつ、小農栽培においても多様化が進みつつある現状を明らかにし、その上で、サラワク先住民の生業・生活の変化がどのような意味を持つのかを、ローカルからグローバルのレベルを往還しつつ検討するものである。ただ、2021年度はコロナ禍のため、現地調査を行うことはできなかった。そこで、これまでに収集した現地調査のデータの整理、ガゼットなどの資料からの情報収集、Web等を用いた補足情報の分析等を行ってきた。その結果、マレーシア・サラワク州のアブラヤシ産業は、2020年度に一時的な停滞を見せながらも、一定程度回復し、同地域の経済を支える存在であることには変化がないと思われる。2021年度に行った作業は、具体的には次のとおりである。 1、現地研究者との協力体制を維持すべく、マレーシア・サラワク大学の研究所とメールやオンライン会議システムで協議し、今後の調査研究の方向性について議論した。2、対象地域の一つであるビントゥル省の状況について、オンライン新聞等を用いて情報収集を行った。3、サラワク・ガゼットなどの歴史的資料は入手済みであったので、土地利用変化に関する過去の記述等を渉猟した。4.これまでに収集した情報をもとに、一定の成果発表(研究会発表、論文執筆)を行った。 2022年度は、これまで収集した情報をもとに、現地調査を計画している。具体的には、小農団体であるDOPPAへの聞き取りを中心に、認証制度の浸透と利活用およびその課題について考察を進めることを考えており、その準備を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は現地調査を中心とする研究計画であったが、コロナ禍により、それが実施できていない。調査対象地は、内陸の村落が多く、通信手段も限られるため、オンラインによる情報収集もごく限定とならざるを得ない。そのため、オンライン・ニュースや既存の歴史資料を参照する形で関連情報を検察・分析する作業にとどまった。一方、現地の大学関係者など、協力関係にある相手とは、メールやオンライン会議等で一定の情報を収集し、2022年度の現地調査の内容等についての検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、現地調査を行うことを考えている。その場合、具体的には、次の諸点について情報収集を行う予定である。1)過去数年においてアブラヤシ認証制度が農村地域にどの程度浸透してきたか、2)その浸透過程における主要なアクターはどのようなものか、3)そのかなでDOPPAのような新興の生産者任意団体がどのような枠割を果たしたか、4)それが認証というグローバルな制度と地域社会の橋渡しにいかなる影響力を持ったのか、5)農業生産に関わる情報の取得と共有が地域社会の変化にどのような意味をもたらしてきたか、などである。これらの情報をもとに、マレーシア・サラワクの内陸先住民がミクロレベルにおける生業・生活の変化を経験してきたのか考察すると同時に、それが、世界市場に流れるアブラヤシ・パーム油のグローバルレベルでの扱われ方とどう関係するのかを議論する。その際に、サラワクにおける実質的に初めての生産者団体DOPPAの、社会経済的かつ政治的な機能を論じることで、政治生態学的な議論へとつなげることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、本研究のうちもっとも大きな比率を占めるはずだった旅費が執行できなかった。
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