超高齢化が進み、人々が人生のあらゆる時期において脳神経的障害の可能性を意識しながら生き始めている日本においては「ライフサイクルの精神医療化」とでも呼べる状況が進行している。人生の節目節目において発達障害、うつ病、認知症といった病の可能性を視野に入れ、身体のみならず、心や脳の健康を維持・向上させることが自然となりつつある。そのような状況下、精神医学のケアが病院から地域へと移行する過程で隆盛した「新健康主義」に着目し、特に認知症や発達障害の当事者運動が心や脳をどう語り始めているのかを分析することで、「脳神経科学的共感」と名付けたあらたな共感の可能性について論じた。
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