研究課題/領域番号 |
19K01276
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大林 啓吾 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70453694)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 司法のグローバル化 / 憲法的救済 / 公衆衛生 / リスク社会 / 司法審査 |
研究実績の概要 |
本年度は、引き続きリスク社会における司法審査のあり方について研究を進めた。特に、公衆衛生の問題について、そもそも国家は公衆衛生を維持する責務を担っているのか、司法は公衆衛生対策の合憲性が争われた際にどこまで判断することができるのか、パンデミック下において司法の救済はどうあるべきかなどについて、比較法的見地を交えながら検討した。 公衆衛生に関する国家の責務については、前年度に比較憲法学会で報告した内容を基に原稿を書き、「国家と公衆衛生」比較憲法学研究33号19-44頁(2021年)として刊行した。司法の救済については、パンデミック下の救済を考える前に、そもそも司法による救済のあり方を考察する必要があり、比較法学会で「憲法訴訟の回路と救済」(2021年)を報告し、また「憲法的救済」千葉大学法学論集36巻2号1-58頁(2021年)を執筆し、アメリカの判例法理を中心に分析し、日米比較を行った。この作業により、司法は権利保障のみならず救済の任務を果たすことも重要であることが判明した。その上で、アメリカではパンデミック下において司法が緊急的対応によって救済を試みていることを検討し、「緊急的司法の萌芽――シャドードケットの功罪」千葉大学法学論集36巻3・4号176-238頁(2022年)を執筆した。 また、これまで続けていたブライヤー著『裁判所と世界』の翻訳作業が終わり、ブライヤー著(大林啓吾ほか翻訳)『裁判所と世界―アメリカ法と新しいグローバルの現実』(成文堂、2021年)を刊行した。この本では、司法のグローバル化について、外国法や国際法を参照する判例法理の展開のみならず、裁判官個人と外国との交流などが描かれており、司法のグローバル化の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究自は順調に進んでいる。 本年度は、ブライヤーの『裁判所と世界』の翻訳を刊行することで、司法のグローバル化の概要を明らかにすることができた。 また、リスク社会における司法について、公衆衛生に焦点を絞りながら、公衆衛生対策に対する司法審査のあり方の検討を続けており、これについても順調に進んでいる。 もっとも、新型コロナの影響により、国際学会での報告、外国での研究会、外国での資料収集ができなかったので、これについては次年度以降に持ち越す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も引き続き、司法のグローバル化やリスク社会における司法の研究を継続する。公衆衛生については比較法的検討や日本の公衆衛生制度の分析を続ける予定である。これについては学会において報告しようと考えている。 また、外国渡航が可能になれば、当初予定していた外国での学会報告やインタビューを行う予定である。さらに、引き続き、地方公共団体における公衆衛生対策に関する資料収集も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で予定していた国際学会の報告や外国での資料収集等ができなかったため、次年度以降、外国出張が可能になれば、それらを実施する予定である。
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