本研究により、意思能力が減退した本人と金融取引を行う場合、以下の3点のアプローチが有効かつ必要であることを具体的に示すことができた。①本人の認知機能を民法上の財産管理能力の定量的なスケールへ当てはめるには本人の生活状況における必要性、多様性、個々の事情等から本人の法的保護の必要性に基づくことが必要である。②成年後見法による公的監督機関を伴わない任意代理人の権限濫用の懸念が大きくなるため、金融機関は、取引相手方の意思能力レベルの把握、本人以外の代理権の正当性等を探知することが求められる。③金融機関は非金融分野である医療、介護分野との連携と高齢者取引に精通した金融人の育成が求められる。
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