研究課題/領域番号 |
19K01396
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
平田 健治 大阪経済法科大学, 法学部, 教授 (70173234)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原状回復義務 / 不当利得 / 解除 / 損害賠償 / アメリカ法 / リステイトメント / 回復法 / 契約法 |
研究実績の概要 |
2年目は、初年度の報告にも記載したように、英米法、とりわけ2011年に公表された回復法リステイトメント第三次を軸に、無効取消と債務不履行解除の場合の原状回復義務の現状を日本法の改正動向に参考となるように分析を深めることであった。前掲リステイトメントのリポーターであったカル(Kull)教授の回復法に関する主要4論文の内容を、引用論文著作等も併せて読み進めるうちに、当初は、申請者自身の英米法の知識不足にも災いされて、カル教授の見解が奇矯かつ独善的なものと写ったが、徐々に、先行するリステイトメントや判例学説を周到に検討した結果であると意識されてきた。そこでの中心的話題は、債務不履行解除における原状回復である。無効取消の場合は、契約に当初より存在する瑕疵により原状回復義務は不当利得の返還であるという理解はほぼ異論がない。ところが、債務不履行解除の場合には、訴権の多様性、コモンローとエクイティの救済方法の差など、沿革の錯綜の影響もあり、また、一旦有効な契約の解消に由来するところの、無効取消との差をどの程度強調するかで、見解の相違が大きいからである。かくして、本年度の成果は、アメリカ法における契約清算法理―契約法リステイトメントと回復法リステイトメントの交錯―という表題にまとまった。契約法リステイトメント一次、回復法リステイトメント一次、契約法リステイトメント二次、回復法リステイトメント三次と続く経過の中で、債務不履行解除の規律がどのように変遷したかを追うものである。そこにおいて、契約関係の清算を不当利得法理との関係でどう位置づけるかのスタンス、それと呼応して、損害賠償における三つの利益(期待利益、信頼利益、原状回復利益)、とりわけ、最後の利益の内容をどう理解するか、契約対価を上限とする法理がどの範囲で働くべきかなどの緒論点が構造化される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要に書いたように、ようやく、対象の全体像の理解が深まり、研究の焦点が定まってきた。本年度の成果は、まもなく脱稿し、現在の奉職校の紀要に投稿の上、掲載予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象の把握の深めをさらに進めたい。この過程で、派生的な論点、問題点の存在が意識されてきており、順次、それらを解明し、本研究の成果として、継続発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、旅費を支出する機会がなかったため。コロナ禍の推移に依存するが、最終年度の予算と合わせ、活用する機会や費目を適切かつ柔軟に探りたい。
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