研究課題/領域番号 |
19K01445
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
久保 慶明 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (00619687)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 税制 / 地方財政 / 持続可能性 / 公共政策 |
研究実績の概要 |
この研究では「自治体財政の持続可能性を高める条件」を示すことを目的として「どのような場合に地方税制は存続するか」という問いの解明にとりくむ。少子高齢化や人口減少が進むなかで財政の持続可能性を高めるには、政治的に困難な合意形成を経た社会保障制度や租税制度の確実な実施が求められる。この研究が注目する税制の場合、納税・徴税義務者から理解や協力を得られれば税制は安定化して存続するが、得られなければ税制は不安定化して廃止に向かう。その分岐を解明するため、この研究では、日本の地方自治体が時限的に導入した税制が、更新され存続してきたことに着目し、質的調査と量的調査を用いた多角的な比較分析をおこなう。 2020年9月から米国で在外研究にあたることになったため、2020年度は当初計画を変更して2つの作業をおこなった。第一に、本研究が対象とするエリートと有権者を対象として、財政認識や政治意識に関する分析と発表を進めた。地域間格差に関する論文では、格差是正をめぐる争点態度が格差認知に規定されること、ただし、結果の格差をめぐる争点態度は財政規律の影響を受けることを明らかにした。在日米軍基地負担に関する論文では、保守的な党派性だけでなく、党派性を超えた日米同盟関係に対する支持が、現状(Status Quo)としての基地負担をめぐる格差認知を正当化することを明らかにした。第二に、それらの知見を踏まえて、前年度までに作成したアンケート調査の質問項目を再検討した。具体的には、税制の再分配機能に関する態度と財政状況認識の交互作用、現状(Status Quo)が正当化されるメカニズムを検証するための調査デザインを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度実施できなかった現地訪問調査が、今年度もCOVID-19の影響により実施できなかったことに加えて、2020年9月から米国で在外研究にあたることになり、税制更新過程の比較分析とエリートに対する郵送調査を実施することができず、当初計画よりも遅れることとなった。その一方で、本研究課題と密接に関わる地域間格差や在日米軍基地負担といった主題に関する分析を通じて、地方税制の存続メカニズムの分析に応用可能な知見を得ることができたため、上記の区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の順序を変更し、COVID-19の影響を受けにくく、かつ、海外に滞在しながら調査を進めやすい、オンラインでの住民調査を先行させる。日本帰国後、対面(またはオンライン)での現地調査、郵送でのエリート調査を順次進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に実施できなかった現地訪問調査が、2020年度もCOVID-19の影響により実施できなかった。それに加えて、研究代表者が2020年9月から米国で在外研究にあたることになり、当初計画していたエリートに対する郵送調査を実施することができず、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は翌年度分助成金と合わせて、COVID-19の状況と研究代表者の海外滞在に対応するため、研究順序を変更し、オンラインによる住民調査、税制更新に関する現地調査、エリートに対する郵送調査の順に充当していく予定である。
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