研究課題/領域番号 |
19K01449
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
清水 直樹 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20508725)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 政治的景気循環 / 選挙タイミング / 解散権 / 早期選挙 / 早期解散 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、内閣による議会解散権の制約がどのような政策的帰結をもたらすのかを明らかにすることである。具体的には、①政権党が自らに有利な状況で解散権を行使することによって利益を得ているのかを明らかにする。②解散権の制約、すなわち選挙の時期が固定化されている場合、どのような制度的条件の下で、選挙時に政権党による拡張的なマクロ経済政策の実施が行われるかを明らかにする。 令和3年度は、①を解明するため、民主制と独裁制の国を対象に分析を行い、どのような選挙タイミングが政権党にとって利益をもたらすのか、政治体制の違いによって政権党が得る利益に違いが生じるのかについて検討した。分析の結果、早期選挙は民主制、独裁制ともに政権党の得票率、議席率に影響を与えないこと、民主制の場合、選挙の遅延は政権党の得票率に負の影響を与えること、逆に、独裁制の場合、選挙の遅延が政権党の得票率に正の効果をもたらすことを明らかにした。この研究成果は、"Does Manipulating Election Timing Benefit Incumbent Governments?"としてまとめて、2021年7月に開催されたInternational Political Science Associationで発表した。 また、②を解明するため、選挙タイミングと財政支出の関係を検討した。先行研究では、選挙タイミングが固定化されている場合、財政支出が拡大し、政権党による選挙タイミングが変更できる場合、財政支出の拡大は行われないとされていた。しかし、この分析結果では、先行研究とは異なり、政権党によって選挙タイミングの変更と同時に財政支出が拡大されていることが明らかにされた。この研究成果は、「民主制と独裁制の垣根を越えた選挙タイミングの包括的分析」としてまとめ、2021年5月の日本選挙学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり、①と②に関連する研究成果を学会で発表している。しかしながら、論文としてまとめる作業にまでには至っていないので、この作業を令和4年度に進める。また、①に関連して、現在、サプライズの解散が政権党にどのような効果をもたらすのかを解明するための研究を進めている。これを論文としてまとめ公表するための作業を進める。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、これまで学会で発表した研究をブラッシュアップし、論文としてまとめて、英文の学術誌に投稿する。加えて、サプライズの解散が政権党にどのような効果をもたらすのかを明らかにした研究を論文としてまとめ、英文の学術誌に投稿する。さらに可能であれば、研究成果全体のまとめを行い、その研究成果を1冊の書籍にまとめて出版する作業を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、国際学会および国内学会に参加するための旅費を計上していたが、コロナ禍の影響ですべてオンライン開催となり、旅費が不要になったため、次年度使用額が生じた。令和4年度もコロナ禍の影響で旅費に使用することは難しいので、分析に必要なデータを整備するアルバイト雇用のための人件費や、英文校正費用など論文執筆のための費用として使用したい。
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