研究課題/領域番号 |
19K01486
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中谷 美穂 明治学院大学, 法学部, 教授 (60465367)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 手続き的公正 / 意思決定過程の選好 / サーベイ実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会心理学における公正研究の理論を援用し、「どのような意思決定過程が人々の公正認識を高め、結果の受容を導くのか」という問いを探るものである。従来、政治学において、意思決定過程への人々の選好研究は、政策への選好と比較すると長らく研究対象とされてこなかった。その理由として、人々は好都合な結果が生み出される限り大半の手続きを許容するだろうとの仮定が政治学で置かれてきたことが挙げられる。しかしながら本研究で参照する手続き的公正理論によれば、司法や組織領域にて、人々は結果だけではなく過程にも関心を払っていること、また過程の公正さがあることにより、決定への満足感や受容度が高まることも見出されている。そこで、これを政治環境に応用し、どのような意思決定過程を人々は選好しているのか、その条件を探ることが代議制機能の向上のヒントにつながるのではないかと考えた。また意思決定過程から代議制の機能を探ることには現実的意義も考えられる。 本年度は個人レベルの手続き的公正認識の差、特にジェンダー差に注目した先行研究を整理するとともに、一昨年度に実施した実験調査を分析した。その結果、代表の場におけるマイノリティと考えられる女性とマジョリティと考えられる男性では、公正認識に影響を与えるプロセスに違いが見られた。具体的には、議会決定前に住民参加の機会が用意されており、議会では会派を超えた話し合いと合意が行われると公正認識が高くなる傾向は、女性においてのみ見られた。また、議会の決定と自分の意見とが不一致の場合に、上記プロセスがあった場合には、女性においてのみ公正認識が高くなる傾向が見られた。この結果を学会で報告し、得られたコメントを踏まえて、成果を論文として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初調査を計画していた時期と新型コロナウィルスの感染拡大とが重なり調査を実施することができなかった。ただし、こうした中でも、手続き的公正における個人差に関する先行研究を整理するとともに、一昨年度に実施した調査を、ジェンダー差に注目して分析した結果をまとめ、学会発表を行い成果を論文として公刊できたため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度、2021年度の研究成果により、決定の場におけるマジョリティ、マイノリティ類型と手続き的公正認識との関連が見出されたため、個人レベルでの手続き的公正認識の差をさらに検討するための、より詳細な実験調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大と当初予定していた実験調査の時期が重なり、追加実験調査ができなかったことによる。今年度は、時期を見て調査実施を行う予定である。
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