研究課題/領域番号 |
19K01520
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
潘 亮 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80400612)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国連 / 冷戦 / 東アジア / 日本 / 中国 |
研究実績の概要 |
2019年度は主に二つの作業を中心に研究を進めていた。 一つは著書の一部として冷戦初期日本の国連外交に関する実証研究及びそれに関する執筆作業である。対象は1950年代初頭から1960年までの日本と国連との関係となっており、昨年四月から資料解読をしながら、章の執筆も開始した。今年3月末まで、三章分の原稿を仕上げており、それぞれ国連への加盟、加盟直後の国連における政治及び安全保障面での施策、並びに国連の「裏舞台」における日本の活動に焦点を当てていた。それとは別個に、日本と国連関係全般に関する別の論文も書き上げており、国連活動に関する概説書の一部として昨年9月、刊行された。なお、原稿の執筆とともに、1960年代以降の国連外交に関する史料調査及び解読分析も同時進行的に行なわれており、外務省外交史料館所蔵の文献を中心に本年3月の時点で計六十冊以上閲覧・複写することができた。(コロナウィルス感染症の影響で2月末以降史料館は臨時閉館が続いているが、再開次第、調査を続行する予定) 本年度中、実施してきたもう一つの作業は冷戦初期の東アジアにおける国連の活動についての複合的な実証研究のために主に中国と米国の史料を調査、収集することであった。昨年中、まず中国側で一般公開されている各種文献資料の収集と解読を行なっていたが、出版物中心の作業だったため、比較的に順調に進んでいた。他方、米国及び国連の各機関をめぐって今年3月から順次実地調査を行う予定だったが、コロナ感染症の影響で延期を余儀なくされた。ただ、ほぼ一年間を通して進めてきた二次文献中心の予備研究によって、研究の大まかな方向性は既に定まっており、後は一次資料を補強しつつ、構想の精緻化を図りたい考えである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の研究は本研究の第一段階にあたり、国連における日米中関係と冷戦期東アジアの国際関係の形成との関連についての検証作業を集中的に行う予定であった。2019年末までの段階で最も資料が豊富に揃っている日本に関する作業が概ね予定通り進められており、執筆も部分的とはいえ、開始していた。しかし、その後、コロナ感染症の影響で当初予定されていた外務省外交史料館、米国国立公文書館、国連本部及び各専門機関文書館、並びに中国の公文書館における実地調査はいずれも延期せざるを得なくなっている。その結果、「日米中」関係を分析するに当って、資料面でのアンバランスな状況が生じており、執筆作業の進展もやや鈍くなってきている。ただ、この遅延は研究構想上の問題に由来するわけでなく、あくまでも突発な事態による一時的な問題に過ぎないため、状況が正常に戻れば、自然に解消できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、第一段階の研究に関して、新しい一次資料がすぐに入手できない現状に鑑み、2020年度の前半(10月までの間)において2019年度に収集した米中両国の二次文献、及び1960年代までの日本側の一次文献を中心に、可能な限り分析作業を前進させる。ある程度まとめられるトピックについては執筆作業にも入りたいと考えている。60年代以降の部分は引続き二次文献(先行研究を含め)の解読を通して構想の精緻化を図っていきたい。 第二段階の国際機関の視点からの研究についても一次資料の制約がある場合、二次文献や先行研究に基づく準備作業を続けていく。また、一部の機関(例えば国連本体)については既にある程度一次資料も収集しており、執筆可能なところがあれば、原稿化することを検討していきたい。 第三段階の個人の役割についての研究作業は当初の計画に従えば、まだ時間的な余裕があるが、状況次第では前倒しに準備作業を開始することも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響で本年度実施する予定だった外交史料館及びスイスの国連機関文書館における史料調査は延期したため、次年度使用額が発生した。 今回中止となった史料調査は状況が正常に戻り次第、次年度に予定されている調査とともに速やかに実施する予定である。
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