研究課題/領域番号 |
19K01520
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
潘 亮 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80400612)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国連 / 冷戦 / 日本 / 中国 / アジア |
研究実績の概要 |
本年度はコロナ感染症の影響によって当初予定されていた外務省外交史料館及び国連専門機関における史料調査がいずれも文書館の利用中止になったため、一部予定を変更しつつ、日本及び中国の国連外交に関する実証研究に取り組んでいた。 2020年4月以降は主に手元にある資料を最大限に活用しながら、冷戦期日本の国連外交に関する論文の執筆に専念してきた。その結果、同年10月までに1950年代の国連外交に関する章(凡そ6万9千字)、2021年3月までに1960年代の国連外交に関する章(凡そ7万2千字)をそれぞれ完成した。それと同時に、1980年代以降の国連外交に関する資料の解読作業も進めており、それに関する章の執筆の準備もほぼ完了している。 さらに、本年度において一次文献の収集は困難になっているなか、冷戦初期の中国と国連との関係に関する二次文献の収集と解読を継続している。そのうえ、国際労働機構(ILO)や世界保健機構(WHO)、並びにプリンストン大学の文書館から以前入手した文献の整理と解読も進めており、ソースブック(データベース)を完成することができた。これによって、今後、補充すべきデータもほぼ判明しており、関係論文と著書の執筆作業の道筋も見えてきたといえる。特に、1940年代後半から50年代半ばまで、ILOと中国との関係に関する課題の分析はかなり進んでおり、今後、先方の史料館との遠距離のやり取りで何とかこの部分の研究だけを完成する可能性がすでに出ている。また、ユニセフに関する一次資料の一部がオンラインで入手でき、それに中国側の二次文献の一部も発見できたので、今後の分析の方向性がだいぶ明確になったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症の蔓延により、海外の文書館のみならず、東京の外交史料館の利用も中止、もしくは厳しい制限が課されたため、第一段階の史料調査がさらに長引く結果となった。また、当初企画していた海外の研究グループにおける成果の発表なども取りやめることになった。 一方、本年度の途中から、感染症の問題の長期化を見込んで、予定を変更して、第二及び第三段階に予定されていた単著の執筆作業の一部を前倒しに実施することにした。その結果、すぐに公表しないものの、確実に研究成果が蓄積されており、再来年の出版に向けて一歩前進することができたといえる。 以上、総じていえば、まだ成果公開の前段階にあるとはいえ、一年間の作業を通して、本研究の二つの主要な課題をめぐっていずれも一定の進展が得られる結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年4月から、外務省外交史料館は部分的に利用が可能となっており、それに合わせて可能な限り、日本における資料収集を再開したい。それに伴い、著書の執筆作業をさらに進め、2022年4月までに、全10章のうち、8章まで原稿を仕上げるよう全力を尽くす所存である。 一方、海外における史料調査が必要である中国の国連外交に関する研究作業は当初、英文著書の執筆を目指していたが、現状に合わせて、ひとまず、現在利用可能なデータを頼りに部分的な研究成果を単発の論文に反映するよう努力していきたい。足りない分については今後、状況が正常に戻り次第、追加の史料調査をもって補っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響で本年度予定されていた国連難民高等弁務官事務所史料館(UNHCR Archives、ジュネーブ)及び国連食糧農業機関(FAO、ローマ)における史料調査は実施できなくなり、また、緊急事態宣言の二度の発令によって、外務省外交史料館(東京都港区)の利用も大幅に制限されているため、その分の旅費はほとんど使用できなかったのである。 次年度(令和3年度)においては、可能な限り、外交史料館における史料調査を再開するとともに、海外における史料調査も渡航制限や利用制限が解除され次第、実施したい考えである。さらに、一部ウェブで購入できる資料については当初の年度計画を柔軟に調整し、前倒しに購入することも検討している。
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