研究課題/領域番号 |
19K01526
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片柳 真理 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 教授 (80737677)
|
研究分担者 |
山根 達郎 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 准教授 (90420512)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 平和のためのビジネス / 平和構築 / ボスニア・ヘルツェゴビナ / クロアチア / ミンダナオ / ローカル・ビジネス |
研究実績の概要 |
令和2年度は、コロナ禍のために計画していたフィールド調査を実施することができなかったため、文献研究及び執筆に力を入れた。具体的成果は、共著論文一篇の刊行、共著論文及び単著論文それぞれ一篇の投稿準備がほぼ終了したことである。 刊行した共著論文では、ミンダナオのローカル・ビジネスに関し、紛争状況下においていかにビジネスを行い、コミュニティとどのような関係を築き、それがどのように平和に貢献するのかを論じた。研究協力者によるフィールドでのインタビュー調査の結果を中心に纏めたものであり、ビジネスにとってのリスクと機会、コミュニティとの関係形成に関する当事者の言説から、これまであまり知られていない紛争下のビジネスの役割を明らかにしている。例えば、モロ民族解放戦線(MNLF)やモロ・イスラム解放戦線(MILF)の兵士たちが従業員として雇用されながら、同時に順番に仕事を休み武装闘争に参加していた。また、これらの武装勢力は国家の警察や軍隊の介入を避けるために地域の治安に努めていたため、企業にとっては武装勢力の基地が近距離にあることはセキュリティのために好ましいと認識される場合もあった。さらに、企業は武装勢力のリーダーを雇用することによって、武装集団との関係や雇用される戦闘員との関係を管理する戦略をとることもあった。コミュニティとの関係性について特筆すべきことは2点ある。まず、企業の経営者らがMNLFやMILFの闘争理由を貧困に起因する憤懣と認識し、武装闘争を批判する立場をとっていないことである。そして、憤懣に基づく闘争であるがゆえに、経済発展が平和につながると認識していることである。第2に、企業とコミュニティとの関係は多様性があり、中立を保っていずれの集団とも一定の距離を保つ場合と、幹部を雇用して協力関係を築く場合とが見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の遅れの原因はコロナ禍である。令和元年度にデング熱の流行によりフィールド調査を断念し、令和2年度には令和元年度分も含めてフィールド調査を行う計画であったが、海外出張が全くできない状況となってしまった。そのため、フィールド調査に関しては大幅な遅れを余儀なくされている。 しかし、研究自体は文献研究と執筆の面で一定の成果をあげることができた。また、学会発表も実施することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度もコロナ禍の影響が続いており、フィールド調査については年度後半の可能性を探りたい。それまでは文献研究と執筆を継続する予定である。また、ミンダナオに関しては一部オンラインのインタビュー調査を実施しており、オンラインで調査をさらに進める可能性も引き続き検討する。 執筆に関しては、ほぼ準備が整ったクロアチアの事例に関する論文一篇の投稿を進め、さらに以前の科研によるデータを用いてボスニア・ヘルツェゴビナに関する一篇の論文執筆を計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主な費目が出張費であったところ、令和2年度はコロナ禍のために海外出張が不可能となったことが理由である。次年度(令和3年度)に状況が許せば、これまで実施できなかった現地調査を実施する計画である。
|