研究課題/領域番号 |
19K01530
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
本多 美樹 法政大学, 法学部, 教授 (30572995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際連合(国連) / 安全保障理事会 / 集団安全保障 / 国際政治 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国連の安全保障理事会(安保理)で決議が採択されるまでの非常任理事国の影響力について考察することにある。本研究では、常任および非常任理事国がいかなる場合に、どの程度協力して決議採択に至るのかについて、交渉のうちの不一致点を操作して譲歩を引き出すための対話と圧力に注目し、共同行動(強制行動と協働行動)に貢献した調整機能としての非常任理事国の役割と影響について考察する。本研究を通じて、今後の安保理での共同行動を可能にする「種」を見つけるとともに、拒否権を持たず、任期も短い非常任理事国が安保理での影響力を高めるにはどのような課題があるのかについても明らかにする。 2020年度は、前年度に引き続き、本研究を進めるうえで基礎となる資料と文献の収集を進めた。2000年以降の安保理決議と議事録、安保理議長国の報告書、決議などを読み進めた。本年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、文献の収集や取材を目的とした海外への出張ができなかったことから、もっぱらインターネットから入手できる文献の収集を行い、先行研究の整理を進めた。とくに、本研究と問題意識が近い論考を輩出してきたオーストラリアの研究グループによる論文を集めた。さらに、非常任理事国の役割を国連改革から分析する論考や、安保理での非常任理事国の役割をグローバル・ガバナンスやオーケストレーションの視点から議論した文献も収集することができたことは今後の研究を進めるうえで意義があった。 なお、国連経済制裁における非常任理事国の役割については、"Smart sanctions by the UN and financial sanctions" として S. Yoshimura ed., "United Nations Financial Sanctions" (Routledge, 2021)に収めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、前年度に引き続き、本研究を進めるうえで基礎となる資料と文献の収集を進めた。それにより、非常任理事国についての先行研究、とくに、本テーマについて多くの論考を輩出してきたオーストラリア研究者グループによる議論や、非常任理事国の役割を国連改革から分析する論考や、安保理での非常任理事国の役割と影響力について、グローバル・ガバナンスやオーケストレーションという視点から議論した文献も収集することができた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大によって海外への出張ができず、文献の収集、とくに事例に関する文献の収集ができなかったこと、実務家から情報収集ができなかったこと、また、オンライン授業の準備に手間と時間が予想以上にかかったことなどは、研究が遅れている原因といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に国連本部やハマーショルド図書館への資料収集や取材のための渡米が叶うかどうかは新型コロナウイルス感染症拡大の状況次第だが、今後もできることを粛々と進めていきたい。まずは、本年度に収集した先行研究の整理をしっかりを行い、本研究の「問い」を明確に設定したい。さらに、事例の抽出と分析を行いたい。本研究と問題の関心が近い先行研究において扱われている事例が少ないことから、本研究では、安保理内での対立と圧力を経てようやく共同行動(強制行動および協調行動)に至った事例を抽出する。研究対象としての妥当性を考えながら扱う事例を選ぶ予定である。 その後、研究の方向性、妥当性などを学会を通じて問いながら論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したことから、予定していた海外への出張ができなかったため使用額に大きな変更が生じた。2021年度に海外出張ができるか否かは感染症の状況によるが、状況が許せば、出張費に使用したい。
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