本研究課題に関連して,contest success function (CSF)の設計に関する論文を公刊した.CSFとは,コンテスト参加者の努力の組に対して,各コンテスト参加者が勝利する確率を規定する確率分布を対応させる関数である.コンテスト参加者の努力の合計が,コンテストの賞の価値の最大値(賞の価値がもっとも高いコンテスト参加者にとっての賞の価値)と等しくなることをcomplete rent dissipation(CRD)と言う.CRDをもたらすCSFの設計について考えた.前年度までに進めていた研究をまとめた2編の論文を査読誌Economics LettersとOperations Research Lettersに投稿し,公刊した. Economics Lettersに公刊した論文は,一般的な枠組みでCSFの設計を考えている.賞の価値がコンテスト設計者に観察可能なばあい,「『任意の均衡でCRDが起きる』ようなCSFが存在する」ためには,「コンテスト参加者が,『3人以上であるか』,または,『同一の賞の価値を持つか』」が必要十分であることを示した.賞の価値がコンテスト設計者に観察不可能なばあい,「任意の賞の価値の組のもとで『CRDが起きる均衡が存在する』」ようなCSFは存在しないことを示した. Operations Research Lettersに公刊した論文は,特定の枠組みの中でCSFの設計を考えている.勝者になる確率が努力の累乗に比例するCSFの範囲で,CSFの設計を考えた.任意の均衡においてCRDが起きるために必要十分なCSFの条件を導いた.
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