本研究は、経済と生殖における再生産という観点から、夫婦のあるべき関係などについてのベンサムの議論を軸に据え、彼の功利主義から構想された経済社会に、いかにジェンダー的再生産の視点が組み込まれたのかということを検討した。 ベンサムの功利主義が各人の幸福の最大化のために、両性への平等な権利付与、女性を抑圧する社会の権力関係の改革、期限付きの婚姻制度を主張したのは、女性といった集団的属性を根拠にした差別的処遇が、社会の幸福最大化を齟齬ときたすからであり、とりわけ人類の半数をしめる女性らの境遇を改善することが重要であるという結論に至った次第を明らかにした。
|