研究課題/領域番号 |
19K01661
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
高橋 理香 法政大学, 経営学部, 教授 (60438786)
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研究分担者 |
矢野 誠 上智大学, 上智大学, 教授 (30191175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CGE Model / Trade liberalization / Maekawa Report / Rice |
研究実績の概要 |
本研究は「国際化時代にふさわしい農業政策の推進として、市場メカニズムの活用や積極的な輸入拡大を行うべきである」と述べた前川リポートとその後に実行された農業分野の貿易政策に焦点をあて、日本の農業貿易政策の転換が日本経済にどのような影響を及ぼしたのか、コメを例に応用一般均衡モデル(CGE Model)を用いて定量的に分析している。分析の結果、コメの輸入に対する数量規制から関税へ転換したことでコメの内外価格差は半減し、社会厚生が2%以上改善されることが示された。この結果は、長期的な経済停滞が続く近年の日本において有効な貿易政策の在り方を示唆するものである。 2019年度は、中間財のないシンプルな一般均衡モデルと産業連関表のデータを用いて、モデルの構築・データベースの作成・パラメターの推計・政策のシミュレーションを行い、それらをとりまとめた研究報告と論文の作成を行った。11月18日の経済産業研究所(RIETI)「市場の質の法と経済学に関するエビデンスベースポリシー研究会」において、Effects of Trade Liberalization on the Japanese Rice Market: A Computable General Equilibrium Approachを報告し、参加者から貴重なコメントを得た。また、報告会での議論を受けて、Effects of Trade Liberalization on the Japanese Rice Market around the 1980sと題したRIETIのディスカッションペーパー(DP)の素案を作成し、2020年2月27日にDP検討会で報告する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大のために検討会は中止された。後にDP素案に対するRIETI所内からのコメントを受け、現在DPを修正している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度には、モデルの構築・データの収集と整備・パラメターの推計とシミュレーションという研究を行うための一連の分析を行い、分析結果を得た。現在は、分析内容をどのようにまとめて論文にするか、先行研究の中での本研究の位置づけをどのように説明するかを検討している。また、2019年度はRIETIでの研究会の発表の機会を得て、参加者から貴重なコメントやサジェッションを得ることができた。その後予定していたRIETIでのDP検討会では、論文やプレゼンテーションの書類を提出し、報告に備えていたが、新型コロナウィルス感染拡大という不測の事態で残念ながら報告はできなかった。しかし、その後にRIETIの所内で検討頂き、コメントを受け取ることができた。現在、それらのコメントを受けて、ディスカッションペーパーを改訂している。2019年度は、RIETIのDP検討会の中止に加え、参加を予定していた日本経済学会秋季大会も台風20号により参加出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の前半までにRIETIへディスカッションペーパーとノンテクニカルサマリーを提出し、掲載したいと考えている。さらに、2020年度は日本経済学会をはじめとする学会や研究報告会で報告する機会を増やし、査読付きの雑誌への投稿のために研鑽を重ねたいと考えている。また、2019年度後半に、研究代表者は、CGE分析を行うためのGAMS(General Algebraic Modelling System)に関して、コンピュータープログラミングのコードトレーニングを受け、より高度な分析を行うためのテクニックを習得した。この経験を活かし、技術的にも内容としてもより高度な研究に発展させたいと考えている。さらに、これまでの研究では、日本の産業連関表のデータを用いてデータベース(社会会計表)を作成しているが、国際貿易政策に関するCGE分析では、GTAP(Global Trade Analysis Project)モデルのデータを用いることも多い。今後の研究ではGTAPのデータも併せて検討したい。
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