2019 年度実施状況報告書

アンチダンピング関税発動の経済分析：その要因と効果

研究課題

研究課題/領域番号	19K01678
研究機関	神戸市外国語大学
研究代表者	鎰谷宏一神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50368552)
研究分担者	友田康信広島大学, 社会科学研究科, 教授 (30437280)
研究期間 (年度)	2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード	アンチダンピング関税 / ダンピング
研究実績の概要	2019年度の研究成果は、以下の通りである。世界の様々な国々による発動が見られアンチダンピング(AD)措置に関して、ダンピングの発生要因とAD関税の関係について理論分析を進めた。具体的には、将来の景気(市場規模)が不確実な状況下で寡占産業におけるAD関税と企業の投資行動の関係を理論的に分析した。　分析の結果、以下の3つの結果を得ることが出来た。①自国の経済状況にかかわらず、外国の経済状況が良い時よりも悪い時の方が自国への外国企業による輸出量は多くなる。また、外国の経済状況にかかわらず、自国の経済状況が悪い時よりも良い時の方が自国への外国企業による輸出量は多くなる。② 自国市場に対する自国企業の供給が多いほど、外国の市場規模が自国市場に近づくほど、外国企業はダンピングを行っていると認定されやすくなる。また、自国市場が不況(好況）で外国市場が好況(不況)の場合に外国企業がダンピングしていると最も認定されやすい（されにくい）。③自国市場と外国市場が不況の場合に外国企業が原価割れダンピング輸出を行う可能性が最も高くなる。一方、自国市場と外国市場が好況の場合に外国企業は原価割れダンピング輸出を行わない。この理論分析によって、実証研究の行うための理論仮説が明確になった。この理論分析をベースにして、景気の動向とダンピングの発生のしやすさの関係について実証分析を行うことができる。各国のアンチダンピング関税に関するデータを入手したので、各国の貿易データや経済データとともにこれをさらに整理し、データ分析を行うことによって今回の理論仮説を検証しようと考えている。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 3: やや遅れている理由理由）前回の科研費のテーマに関して執筆した論文のリヴァイズに時間が割かれた。また、所属大学の校務などに時間が割かれたため、作業の進捗状況に悪影響が出た。さらに、研究代表者と研究分担者は様々な機会を利用して打ち合わせを行うよう努力したが、研究分担者が海外の大学に滞在し、研究活動を行っていたこともあり、共同作業が思うように進展させることが出来なかった。こうした理由のため、研究目的の達成度が、当初の予定よりやや遅れている。
今後の研究の推進方策	現在も、前回の科研費のテーマで執筆したある論文のリヴァイズに取りくんでいる。これをまずは早急に終わらせ、分析作業を進めたい。将来の景気が不確実な状況下での寡占産業におけるAD関税と企業の投資行動の関する理論モデル、及び景気の動向とダンピングの発生のしやすさに関する考察は完成しているので、すでに収集したアンチダンピング関税のデータと貿易データなどを実証分析で用いることが出来るように加工し、実証分析を行い、論文としてまとめたい。また、新型コロナウィルス感染拡大の影響によって、研究代表者と研究分担者が打ち合わせや共同作業を行うのに支障が出ている。様々な機会を利用して共同作業を進める努力をするとともに、ウェブ上でも打ち合わせを行うことなどで、研究の進捗に支障が出ないようしたい。
次年度使用額が生じた理由	昨年度は、研究成果の報告を学外の研究会などで報告できなかったので、次年度使用額が生じた。今年度は、新型コロナウィルスの感染が収束すれば、学外で実施される研究会等で研究報告を行う予定である。また、いくつかの論文について英文校正を行う必要がある。そうしたことに、次年度使用額を利用しようと考えている。