研究課題/領域番号 |
19K01692
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 浩 東北大学, 経済学研究科, 教授 (60275823)
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研究分担者 |
上村 敏之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00328642)
金田 陸幸 尾道市立大学, 経済情報学部, 講師 (50782083)
佐藤 康仁 東北学院大学, 経済学部, 教授 (90337189)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高齢化 / 公的年金 / 財政検証報告 / マルチエージェントモデル / 将来人口推計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、公的年金制度およびその検証報告が学術的にみて社会保障上の実効性と真の持続可能性を担保しているかを明らかにすることである。 この観点から、第1に吉田は「平成元年年金財政検証報告」の内容を独自に検証した。同検証結果では、将来の年金給付の水準を評価する重要な指標として示されている「所得代替率」が前回の平成26年財政検証報告に比して、改善しているという結果に疑問を抱いた。そこで、この所得代替率試算の基礎となる、高齢者の将来の年金受給額と将来の勤労世代の手取り賃金を独自に再推計した。その結果、今後の経済を予測する前提において、より低成長の仮定の下により低く将来の勤労世代の賃金が推計されたことで、実際の将来の受給年金額が平成26年の財政検証報告よりも低額であるにもかかわらず、見かけ上の所得代替率が高くなっていることを明らかにした。 第2に、上村、金田は将来の年金受給の推計と評価の根幹となる、将来の人口や世帯数、世帯構成に関し、マルチエージェントモデルの手法を導入し、その基礎的推計結果を公表した。 本年度の研究においては現行の年金財政検証報告は、学術的に見て、信頼のお帰るものとは言えない可能性が指摘された。この結果と我々研究班の将来推計モデルの開発を進めることにより、より頑健なる公的年金財政の見通しを構築できるとともに、将来からバックキャスティングにより、公的年金の持続可能性を維持するために必要な改正の時期と規模をより根拠を以って定量的に示す必要性の大きさがより一層増大したといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は 1)公的年金財政報告が真に信頼できるるものであるのかを学術的見地から独立して検証すること、 2)これにとって代わる財形検証手法を確立して、 3)現時点で公的年金が社会保障としての機能を果たしつつ持続可能性を維持する解決策を提示することである。 以上の課題にに対して、本年度は1)について財政検証の再検証を終え、その問題点を明らかにすることができたこと、2)についても、マルチエージェントモデルによって、独自の推計モデルの開発が進んでいること、の点から初年度の成果として3)へつながる順調なステップを進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、政府の財政検証報告にとって代わる財形検証手法を確立することが必要である。このため、 1)引き続きマルチエージェントモデルを進化させ、将来人口、世帯構成のより現実的な推計を行うこと 2)上記人口推計を根拠とした、経済成長率及び利子率の推計モデルを発展させること、 3)社会保障の機能である「低所得者に対する老後生活保障機能」を維持したもとで、公的年金制度の持続可能性を保つための、支給基準の見直しへ研究を発展させる。
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