研究課題/領域番号 |
19K01716
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
モヴシュク オレクサンダー 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (50332234)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの学力 / 社会経済的地位 |
研究実績の概要 |
家庭の社会経済的地位(SES)が子どもの学力に大きな影響を与えると、経済的不平等が拡大して世代間移動の停滞をもたらす危険が生じる。特に 貧困家庭の子どもは、教育環境の悪化により成人時において貧困から脱却する機会を失う可能性が高くなる(貧困の連鎖)。 初年度は、当初の計画通り、Organization of Economic Cooperation and Developmentが実施した「Programme for International Student Assessment (PISA, 以下、調査A) 」(2003~2015年、4回分)のデータを利用し、15歳児の学力に対してSESが与える影響(SES効果)の長期的な変化を分析した。4つの調査票をダウンロードし、各調査を比較可能にするための調整を施した。その後にデータ整理と編集作業を完了させてから、家庭のSESが学力に与える効果を推計した。分析方法は教育生産関数に基づき、説明変数として「子ども本人の属性」、「家庭のSES」、「保護者の教育投資」、「学校の特性」、「教師の特性」などを使った。この分析で一番中心となる家庭のSESは直接観測が不可能であるため、「保護者の学歴」、「保護者の職業」および「資産指標」の3つの代理変数によって近似した。 この分析により、家庭のSESのレベルが高ければ高いほど、学力の得点に与える影響が大きくなり、また長期的には2003年と比べて2015年のSESの影響が相対的に上がったという結果を得た。さらに毎回の推計において、モデルの説明変数の中でも家庭のSESの影響が一番大きくなる結果となった。他方、「学校の特性」と「教師の特性」の要因が学力に及ぼす影響は相対的に小さく、また長期的にもこの小さい影響はあまり変化がなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示したとおり,当初の研究目的・研究実施計画に従って順調に研究を遂行したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、「Trends in International Mathematics and Science Study (TIMSS, 以下、調査B)」の調査票データを利用し、14歳児の学力に対してSESが与える影響(SES効果)の長期的な変化を分析する。そのため、調査B(2003~2015年、5回分)の調査票のデータをダウンロードし、各調査間で比較可能となるよう整理する。 分析方法は調査Aと同様のため、詳しい説明は省略する。この分析で特に注目される点は、①14歳児の「子どもの学力」に与える「家庭のSES」の影響の長期的な変化と、②学力の要因の中で「家庭のSES」の影響が相対的にどの程度変化したかを分析することである。そして最後に調査Aの結果との詳細な比較分析を行い、両調査間でSES効果に異なる傾向が発生する原因を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:物品の依頼時点よりも安価に提供する業者があったため。 使用計画:文具費。
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