研究課題/領域番号 |
19K01832
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
岡本 哲弥 滋賀大学, 経済学部, 教授 (10411042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自動車産業 / ネットワーク分析 / 次世代自動車 |
研究実績の概要 |
本年度は、CASEに関する情報収集を幅広く行うことに集中し、課題や論点の整理に努めた。 脱炭素化ないしはカーボンニュートラルの社会経済的な流れの中で、電気自動車(EV)は走行時には二酸化炭素を排出しないことから、メーカー各社は、電気自動車への生産シフトを鮮明にしている。しかし、製造時や走行時の電気使用で間接的に二酸化炭素を排出するため、ライフサイクルにおける環境負荷を考慮しなければならい。自動車の生産・消費での環境負荷を正しく評価するためにLCA(Life Cycle Assessment)の重要性が高まっており、日本では消費時の環境負荷を含めた議論が不可欠である。 特に、電気自動車には、蓄電池の役割が重要になるが、車載用のリチウムイオン電池は中国のCATLとBYD、韓国のLG科学とサムスンSDIで7割程度のシェアを占める。蓄電池の生産には電極に使うリチウム、コバルト、ニッケルが必要である。また、電気自動車のモーター用磁石には、プラセオジム、ネオジム、ジスプロシウムが必要になる。こういったレアメタルの安定調達が求められるととも、そうしたレアメタルを起点したコア部品(バッテリー、モーター)生産に至るサプライチェーン、さらにコア部品から電気自動車生産に至るサプライチェーンの構築が自動車メーカーに求められている。 また、そもそも2021年後半には半導体需要が急増する中で、2021年2月の米テキサス州の停電、2021年3月のルネサスの火災で半導体需給は逼迫し、自動車メーカーは大規模な減産を余儀なくされている。マイコン、EVの中核部品のパワー半導体、自動運転に欠かせないプロセッサーやセンサーなどの半導体について、中長期的な部品の安定確保に加えて、サプライチェーンにおけるリスク管理が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、コロナウイルス感染症の終息が見通せないのため、CASEに関する情報収集に留まり、研究成果として大きな進展させることができず、特に学会発表や論文投稿など成果物の公表には至らなかった。 また、コロナウイルスの影響、天災や事故による半導体の需給逼迫といった新たな重要な論点が加わり、当初の研究計画にとっては攪乱要因となるため、論点の整理が必要になった。そのため、当初の予定した計画からはやや遅れることとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
カーボンニュートラルの議論において、電動自動車(EV)だけでなく、燃料電池車(FCV)も自動車メーカーには選択肢になる中で、CASEのEに関する議論は、今後の自動車産業におけるドミナント・デザインの方向性を示唆するため、極めて重要性がある。そこで、CASEの項目での優先度、データの入手可能性、さらには本年度の論点整理も踏まえて、次年度は、電気自動車(EV)に焦点を当てることで、研究を進展させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症終息が見通さないなかで、学会発表などの研究活動が低迷したことが差額の生じた主な要因である。 次年度の計画において、今年度の計画で未達の部分を織り込みながら研究を遂行し、予算についても使用する予定である。
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