本研究の学術的意義は、「意図せぬ不正」を働く組織人の倫理観の揺らぎや心理変容のプロセスを学際的なアプローチで掘り下げて分析した「行動倫理学」の知見と研究の成果を基に現代の経営に埋め込まれたコンプライアンスの制度の運用上の課題を理論的に浮き彫りにしたことである。また、本研究がスポットライトを当てた「コンプライアンス・プログラムの形骸化」と「社内や職場における意図せぬ不正」については、現代日本の企業社会が否が応でも向き合わざるを得ない課題となっているため、本研究の内容もまた時代と社会からの要請に適合しているといえる。
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