研究課題/領域番号 |
19K01898
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
亀岡 京子 東海大学, 政治経済学部, 教授 (80589614)
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研究分担者 |
中村 亮一 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (30366356) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユーザーイノベーション / ユーザーコミュニティ / コラボレーション / 産官学連携 / 医療機器・ロボット / 福祉機器・ロボット / 仲介機能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は次の3点を明らかにすることにあった。(1)医師・看護師・介護福祉士などのプロフェッショナルなユーザーによるイノベーション創出プロセスの特徴はどのようなものか。(2) 医療・生活支援用機器・ロボット産業に携わる企業規模の特徴から、エコシステムの形成における他の産業とはどのような違いがあり、その違いが生じる要因とは何か。(3) 病院・介護施設といった組織と企業・公的機関・研究機関との組織間関係および組織プロセスはどのようなもので、公的機関による起業支援などの制度はどのような役割や効果を持つのか。 2020年度は国内外への出張が叶わず,前年度に実施したインタビュー調査の再検討を行った。その結果,当初の研究対象に入れていなかった「ユーザーコミュニティ」や「仲介機能を持つ機関」が製品開発やイノベーションに影響を及ぼすという新たな知見を得られた。 既存研究では,リードユーザーの持つ専門的知識やニーズにより製品開発が牽引されること,ソフトウエア開発などではあるいはユーザー同士のコミュニティで提示されたニーズをメーカーが製品化することで新製品の開発に繋がることが明らかにされている。 だが,今回の研究成果では,前述のとおり,手術支援ロボット製品開発プロセスの事例を分析した結果,先行研究とは異なる知見が得られた。具体的には,グローバルな視点で見るとプロフェッショナル・ユーザーの能力の違いがメーカーの想定した製品目的を拡張させたこと,その結果として企業の業績にも影響を及ぼしている可能性がある。 本研究の対象の医療・福祉・介護向け機器・ロボット分野におけるイノベーション創出やエコシステムの形成を考察する場合,リードユーザーの能力の違い,ユーザーコミュニティの在り方,コミュニティから伝播するスキルなどに加えて,組織の形態や個人の動機付け,知識共有の誘因なども併せて検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
もともと参与観察を研究方法の一つに考えていたが,コロナ禍で企業の中に常駐することは不可能になった。また,2019年10月から研究休暇中にデンマークに滞在して調査を行うことができたが,3月中旬に帰国後,パンデミックにより再びデンマークへの渡航が叶わず,調査が中断してしまった。国内の出張もできなかった。 研究方法に参与観察を考えていたため,大幅な見直しを迫られている。また,定性分析中心の研究方法を取ってきたため,インタビューや現地調査が2020年度中に実施できず,既存研究の論文サーベイに終わってしまったところがある。
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今後の研究の推進方策 |
第一に考えなければならないのは,参与観察の手法の見直しである。これは調査先企業と調整しなければならないが,基本的にはオンラインを含めたインタビュー調査に変更する必要がある。 次に,COVID-19 の影響により,日本でも急速に注目されている遠隔医療に関して,情報通信技術を含めた機器やロボットの開発・製造プロセスに関する研究を実施していきたい。具体的には,2021年度はデンマークのオールボー大学と日本政府が共同で進めているJ-D Tele Techによる遠隔医療の研究チームに関与し,どのようなエコシステムが形成されているのか実態調査を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は日本企業での参与観察とデンマーク企業のインタビューといった定性調査を中心としている。ところが,2020年度はコロナウイルスによるパンデミックのため,それらがすべて不可能になった。そのため,過去の研究のレビューを主として行っていたため,予算の執行がほぼできなかった。2021年度もあまり海外渡航は期待できないため,2022年度の予算の繰り越し,研究期間の延長依頼も考えている。
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