本研究は、地域社会が抱える複合的な課題の解決にとりくむ社会的企業のガバナンスのあり方と支援システムの提起を目的としている。本年度は、社会的企業に関する理論分析や直近の研究動向の分析、協同組合やNPOによる高齢者介護・生活支援の現状の分析、協同組合やNPOにおける社会福祉経営の理論的分析を進めた。また、社会的企業の経営とその支援の現状を検討するために聞き取り調査を行った。具体的には、NPOのあり方に着目し、NPOの持続的な経営の実現に必要な条件、ならびに、それを可能とする支援のあり方について、自治体や中間支援組織等から聞き取り調査を行った。 一般的には、NPOの経営者や活動者の高齢化、人材不足などにより、NPO活動の変化が求められる現状があること、また、東日本大震災の被災地のように、被災から年月を経ることによって地域社会が抱える課題に変化がみられる状況がある場合には、NPO活動のあり方が変化を迫られたり、支援のあり方にも変化がみられることがわかった。とくに、復興に関わる財源の縮小は活動のあり方に影響を与えている。支援の現場の動きから、地方都市や農村部においては、当該地域におけるNPO支援を行うだけでなく、NPO支援のネットワークの広域化を図る試みがなされたり、NPO支援とコミュニティ活動の支援を融合させる試みがみいだされた。後者については、市民活動・NPO活動だけでなく、自治会・町内会等の地縁団体や地元企業など多様な主体が関わるコミュニティ活動を支える仕組みづくりを進める事例がみられる。そのような現状から、地域社会の複合的な課題の解決に向けた多様な主体の連携の必要性がみうけられ、そのような状況に対応したガバナンスのあり方の検討が求められる状況がみてとれた。
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