日本において鉄道の乗客が移動中に行う活動が長期間でどのように変化してきたかを分析した.データは,調査者が鉄道に乗車して乗客の活動を観測したものに限定し,文献調査とYouTube動画の内容分析によって収集した.収集したデータは1983年~2019年の期間にわたる30万人以上の活動を含むものである.対象とした移動中の活動は「携帯電話」「睡眠」「読書」「音楽」「その他」の5つであり,「読書」は「新聞」「書籍」「雑誌・漫画」に細分類した.メタ分析を行った結果,各活動が行われている比率に関する具体的な数値や,その数値が時代とともにどのように変化したかが統計的に検証された.これは,第69回土木計画学研究・発表会(2024年5月,札幌市)およびThe 17th International Conference on Travel Behaviour Research(2024年7月,オーストリア・ウィーン)での報告が決定している.また,2022年度に社会生活基本調査の2001年,06年,11年,16年のデータを用いて,移動中の活動の時代変遷を分析したが,それを再整理し,メタ分析の結果と比較した.この内容は,国際査読誌で審査中である. これ以外に,時代変化を分析するにあたっては構造変化を特定できるモデルが有用である可能性があり,パネルデータを用いて内生的に構造変化を特定するモデルを推定した.分析に用いたデータは日本のバス事業者の費用構造を表すものであるが,規制緩和のアナウンスと実施の時期と,構造変化の時期について検討した.これは,Journal of Transport Economics and Policyで出版された. さらに,移動中の活動可能性が広がるという特徴を持つ自動運転車の利用意向に関する分析も行い,第68回土木計画学研究・発表会(2023年11月,東京都)で報告した.
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