研究課題/領域番号 |
19K01968
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
李 キョンテ 東洋大学, 経営学部, 教授 (40453857)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共同消費 / コラボ消費 / シェアリングエコノミー / 物質主義 / サブスクリプション / シェアリングサービス |
研究実績の概要 |
本研究ではシェアリングエコノミーにおける共同消費(コラボ消費:collaborative consumption)について、シェアリングサービスの要素、物質的および節制的消費志向、ウェルビーイング(生活満足度や幸福感)などの概念を用いて検討している。 2020年度にはシェアリングエコノミーにおけるコラボ消費の概念について類似概念と比較しながら整理するとともに、物質主義的な消費志向(マテリアリズム:materialism)とシェアリングサービス利用の関係に関する実証研究を行った。 前者に関しては、先行研究におけるコラボ消費の概念が整合性に欠け、多元的に用いられる現状を問題意識とし、シェアリングエコノミーにおけるコラボ消費の概念について体系的な整理を試みた。その成果をまとめて「コラボ消費の概念と多元性に関する一考察~シェアリングエコノミーと関連して~」を執筆し、東洋大学経営学部の『経営論集』(97:47-69)に発表した。この研究成果は、シェアリングエコノミー下の消費現象を整理・分類することで、コラボ消費の概念を明確化したことに意義がある。 後者に関しては、シェアリングサービスの一形態としてアパレル・サブスクリプションに着目し、その利用意図に物質主義的な消費志向が与える影響を検証した。アンケート調査と統計解析が行われ、その成果を「消費者の物質主義と探索傾向がアパレル・サブスクリプションの利用意図に及ぼす影響」にまとめた。当該論文は日本流通学会の『流通』(47:59~72)に掲載された。この実証研究では、所有を伴わないサブスクリプション型のアパレル消費には、物質主義が探索傾向を経由して利用意図に間接的な影響を与えることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構成概念の検討・整理、ならびに、実証研究が一部遂行できたものの、当初計画したような、ボランタリーシンプリシティやシェアリングサービス要因を含めた実証分析には及んでいない。その理由のひとつとして、科研費申請時には想定しなかった学科長を2019~2020年度の2年間連続して拝命し、その業務に取り組んだことが考えられる。学科長就任以来、学務へのエフォート率が大きく上昇した。さらに、新型コロナウイルスという予期せぬ事態への対応も迫られた。これらの影響をうけ、綿密な準備を要する定量的な調査と分析がやや遅れる結果に繋がったと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には学科長を退き、実証研究の遂行に注力したい。これまでの研究成果を踏まえて、シェアリングサービス要素やボランタリーシンプリシティといった鍵概念に関する検討を深めつつ、データの収集と分析に取り組む予定である。データは調査会社の協力を得て一般消費者から集める考えであり、主たる分析手法として構造方程式モデリングを予定している。また、シェアリングエコノミーとコラボ消費への参加が消費者の生活満足とウェルビーイングに与える影響についても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたコラボ消費の先行要因に関する調査が部分的にしか実施されず、アンケート調査の費用が次年度使用額として残る結果となった。 次年度使用額については、2021年度にシェアリングサービス要因、ボランタリーシンプリシティなどコラボ消費の先行要因を含めて、アンケート調査をはじめとする実証的な調査と分析を行う計画である。
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