消費者ミニマリズムが共有型サービスの継続利用意図に与える影響を検証した。消費者ミニマリズムは、物質的消費を必要最低限に抑えつつ生活の充実やウェルビーイングを追求する点で、ボランタリーシンプリシティと類似な面がある。ただし近年、学術的概念化と測定尺度の開発が進み、その独自性も論じられている。ミニマリズムに起因する所有の節制志向は共有経済下のシェアリング行動にも影響を与え得る。そこで、シェアサービスの利用経験者を対象に日本とオーストラリアで調査を行った。 また、消費者ミニマリズムの動機を制御焦点(促進焦点と予防焦点)理論に基づいて検討した。そして、継続利用意図への影響では、perceived sincerity(利用したサービスにどれほど誠意があると感じたか)を媒介とした逐次的な因果関係を検証した。 データは文化的相違を考慮し、日本(vertical collectivist culture)オーストラリア(horizontal individualist culture)で集めた。分析結果、動機要因では促進焦点と予防焦点がともにミニマリズム傾向を促進した。ただし、日本人は予防焦点的な動機からモノの所有を控える傾向が強かった。さらに、perceived sincerityが顕著な媒介機能を果たし、ミニマリスト消費者の継続利用意図を規定する決め手の一つであることがわかった。特にその傾向は日本人消費者群で目立った。これらの成果を論文にまとめ、現在国際ジャーナルに投稿中である。 以上を含めて研究期間全体では、消費と所有を追求する物質主義、消費と所有を節制するボランタリーシンプリシティと消費者ミニマリズム、そして消費者ウェルビーイングが、共有経済における共同消費(collaborative consumption)と持つ多角的な関係を実証的に解明した。
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