研究課題/領域番号 |
19K01969
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
水野 学 日本大学, 商学部, 教授 (80411685)
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研究分担者 |
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユーザーイノベーション / リードユーザー / 商品開発 / グラフィックレコーディング |
研究実績の概要 |
2021年度も、前年度に引き続き研究計画が大きく変更せざるをえない状況であった。現在はウインタースポーツのトップアスリートへのインタビュー調査のフェーズに進んでいるが、コロナ禍の影響でインタビューのための移動が制限されてしまっている。これに加えて2021年度は、北京冬期五輪の準備および大会期間に入ってしまい、インタビュー活動は事実上不可能となってしまった。 そのため2021年度は前年度と同様、理論研究と異分野でのリード・ユーザー法の事例研究を中心に進めてきた。とくに前年度より進めてきた、作業着ユーザーの知見を一般カジュアルウエアや用具に転換して成功を収めている企業の事例研究や、デザインシンキング、グラフィックレコーディングなど、リード・ユーザーの持つ知識を移転させるための手法として応用が可能な研究について理論的な検討を行った。とくにグラフィックレコーディングは注目に値する。これまでユーザーとプロデューサー(生産者)とのコミュニケーションは、インタビューに代表される言語とそれをテキスト化した情報か、ユーザーの情報や試作品をそのまま見せたり、写真など画像化・映像化する方法のいずれかであった。ところがグラフィックレコーディングでは、情報の提供者(本研究ではユーザー)が持つ複雑な概念や情報をグラフィック化(イラスト化)することで、情報の粘着性を低減させようとするものであり、これまでとは異なるコミュニケーションが期待できることがわかってきた。 ただ一方で、グラフィック化するためにはスキルが必要となるが、こちらについてはかなり専門的な知識やスキル、そして教育が必要となり、誰もが使えるわけではないという問題点も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響に加え、冬期五輪イヤーであったため、インタビューを予定していたウィンタースポーツアスリートへのインタビューが不可能になってしまったことが最大の原因である。これに加えて、年1回開催されているユーザーイノベーション研究の国際カンファレンス Open and User Innovation Communityもオンライン開催で、その活動はもちろんのこと、本分野の研究者たちとの交流や共同研究(リサーチ活動)がまったくできない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の延長をお認めいただいた2022年度は、次の2点において状況が改善されるため、これまでの遅れを挽回できる可能性がある。一つ目は、コロナの影響が徐々に収束しつつあるため、インタビューや情報収集のための移動がこれまでよりも自由になる可能性がある。海外での活動は難しいものの、国内に関してはかなり制約がなくなるものと期待できる。もう1つは冬期五輪が終了したため、アスリートへのインタビューやアンケートの可能性も高まったことである。研究倫理的にも、五輪前の選手へのインタビューは自粛せざるを得なかったが、終了したことでこちらも制約が少なくなるものと期待できる。こちらについては、研究協力者である五輪経験者とも準備を進めている。 これに加えて、今回の冬期五輪において研究協力者が開発に参加した用具を使用したアスリートが好成績を収めたことも、研究を進める大きな要素となり得る。認知度が高まったことで研究協力者が増えることに加えて、共同開発した企業とのリードユーザーとの関係が変化してきているからである。これらを活用しながら、より研究を進められるよう努力したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による行動制限に加え、2021年度にもっとも大きな時間を割く予定であったアスリートへのインタビューが、冬期五輪の影響でまったく実施することができず、予算を執行することができなかった。現在はコロナの影響も低減してきていることに加えて、冬期五輪終了にともない研究活動への協力も依頼しやすい環境が整っているため、予定していた研究活動をそのまま2022年度にスライドすることで予算を使用する予定である。
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