研究課題/領域番号 |
19K01977
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀和 関西学院大学, 商学部, 教授 (30368451)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自動車産業 / 部品調達 / ロジスティクス / 在庫管理 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、需要変動が激しく、かつ在庫費用が莫大な自動車産業において、国内外の遠隔地に立地する組立工場に対して、部品サプライヤーがどのように空間的懸隔を克服しJIT生産を達成しているのか、各メーカーおよび調達物流を担う物流企業のロジスティクス戦略に着目し、ヒアリング・現地調査およびデータ分析を通じてその仕組みを明らかにすることである。 本年度は、これまでに日本国内で行ったヒアリング・現地調査の結果、さらに継続して収集した資料・データを基に、幾つかのワーキングペーパーに纏めた。その内の1つが、査読付き国際学術雑誌に論文として掲載された。その論文では、自動車組立メーカーが所有・運営する部品輸出用の物流センター(いわゆるパーツ・コンソリデーション・センター)の仕組みに着目し、海外組立工場と国内部品サプライヤーとの発注情報のやり取り、生産計画、部品の配送方法、輸出用コンテナへの積込み方法等について、国内主要組立メーカー2社を対象に比較分析を行った。その結果、2つの物流センターでは、特に調達頻度や輸送費負担、コンテナへの積込み方法・荷姿に関して、大きく異なることを明らかにした。具体的には、(国内での)物流費用の最適化(最小化)を目指すか、あるいは海外組立工場での生産段取り費用等をも含めて(全体の)ロジスティクス費用の最適化を目指すかにおいて、異なるロジスティクス・システムが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度前半は、共同研究者であるGuerrero博士(フランス、The French Institute of Science and Technology for Transport, Development and Networks: IFSTTAR)が研究代表者の大学に約4ヶ月間滞在し、この間にこれまでの先行調査結果を再検討すると共に、補足的なヒアリング・現地調査も行い、幾つかのワーキングペーパーに纏めた。その内の1つの論文(国内自動車組立メーカーによる海外組立工場への部品輸出)が、国際学術雑誌に掲載された。 後半は、国内部品サプライヤーによる遠隔地組立工場への部品調達に関する分析結果を国際学会(2020年3月)で報告するため、ワーキングペーパーの改良等を進めたが、新型コロナウィルスの感染拡大により学会が中止となった。改良した論文については、国際学術雑誌への投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度(主に前半)は、研究代表者の在外研究期間(1年間)を利用して、フランス・パリを拠点に欧州・北アフリカ等でのヒアリング・現地調査を進める予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大により滞在不可能(入国制限措置)な状況となった。また、世界各地の自動車組立工場・部品工場において操業停止、ないし減産体制が続いているため、年内の現地調査には困難が予想される。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷から、世界自動車生産台数は少なくとも20%減少(19年比)する見通しで、自動車産業、さらにはサプライチェーンに長期的な影響を及ぼすであろう。 そのため、前半は、(1)(昨年度に引き続き)ワーキングペーパーの改良、国際学術雑誌への投稿を進めるともに、(2)自動車産業への上記影響に関する情報収集・分析に注力する。後半は、世界的な感染拡大・収束状況等を踏まえて、可能な範囲でヒアリング・現地調査を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、これまでに行った先行調査の結果を中心に、また補足的なヒアリング・現地調査、資料収集等を加えて、学術論文として纏めた。そのため、助成金使用による実質的な現地調査の回数は限定的であった。また、当初予定した国際学会での研究報告も、新型コロナウイルスの感染拡大により中止となった。2020年度は、研究代表者が在外研究(1年間)の機会を得ているため、国内のみならず、海外でも集中的にヒアリング・現地調査を行う予定としていた。 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大、さらに自動車産業の稼動停止・生産縮小により、(少なくとも)年度前半の現地調査は不可能であることが予想される。世界的な感染拡大・収束状況も踏まえ、ヒアリング・現地調査を再検討したい。
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