研究課題/領域番号 |
19K02019
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
小西 範幸 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (80205434)
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研究分担者 |
宇佐美 嘉弘 専修大学, 経営学部, 准教授 (60255966)
池本 正純 専修大学, その他部局等, 名誉教授 (80083608)
為房 牧 岐阜協立大学, 経営学部, 准教授 (70756593)
稲積 宏誠 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (00168402)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統合報告 / 企業家の機能 / ステークホルダー経営 / テキストマイニング分析 / 資金主体論 / オクトパスモデル |
研究実績の概要 |
本研究では,経営者の根源的な役割を示すビジネスモデル発案機能,リーダーシップ発揮機能,およびリスク負担機能の3つの企業家機能を用いて統合報告書のトップメッセージの分析を行うことで,統合報告書を公表する企業像を明らかにする。 経営者はビジネスの世界でのイノベーションの実現を可能にするために企業家機能を発揮し,経営者のビジョンとその実現へ向けての経営戦略等を具体的に説明するための手段として統合報告書を公表する。そのトップメッセージには経営者の役割/機能が集約して記述されているため,企業家機能(経済学)と統合報告書(会計学)の理論的な融合について,ステークホルダー経営を介して試みる。 また,それを実証するために,昨年度に引き続き,トップメッセージから3つの企業家機能を示す記述を機械的に抽出するための予測モデルの構築を試みている。その手法としては,①機械学習アルゴリズムの一つであるナイーブベイズ法を用いること,および②企業家機能の有無を特徴づける語の組み合わせによる判別を組み合わせることによって進めてみた。その中で得られた知見は以下のとおりである。 (1)学習用データの見直し:学習データは企業家論の研究者である池本(研究分担者)の評価に基づき構築されているため,その客観的な評価を実現することは課題の一つである。ナイーブベイズ法による予測結果を精査することにより,企業家機能についての池本による評価結果を見直し,学習用データの修正を行っている。 (2)2段階分析方法の見直し:ナイーブベイズ法の適用は,企業家機能の有無を判定したうえで,その種別を判別するという考え方によって進めた。しかし,企業家機能を示す表現がない段落がある段落よりも多く出現する不均衡データがあるため,学習や複数手法の組み合わせ(アンサンブル学習)の考え方を適用することで予測精度の向上を図っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染拡大によってアメリカ会計学会(AAA)等への出席が叶わず,統合報告書等でのサステナビリティ情報開示に関する最新の国際的動向についての把握が遅れた。また,研究分担者がコロナ感染の濃厚接触者になったりと,テキストマイニング分析結果の検討を行う合宿での研究会が当初の予定通りに開催できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,まず,企業家論を軸とした経済学と資金主体論を軸とした会計学の融合について,ステークホルダー経営に加えて,国際統合評議会(IIRC)の「統合報告フレームワーク」のオクトパスモデルを介した検討を試みる。それによって,経済社会にサステナビリティを持たせるには,統合報告書の公表が不可欠であることの根拠を明らかにする。 次に,10か国から各国5社の計50社を対象としたものと,日本の製造業からの37社を対象としたものとに分けたテキストマイニング分析を利用することで,以下の取り組みを行う。 (1)予測モデルの精度向上:今年度から継続して,ナイーブベイズ法を中心として,他手法を組み合わせるアンサンブル学習のための新たな取り組みを模索する。また,学習対象データの領域的な特性(国別,業種別など)の予測モデルの精度に及ぼす影響について分析・検討する。そして,これらを踏まえての予測モデルを提案する。 (2)企業家機能表現の典型パターンの抽出:予測モデル構築過程で得られる分類基準を活用することにより,企業家機能表現の典型パターンを抽出する。単語レベル,イディオムレベル,文レベル及び文脈レベルにおける特徴抽出を行い,池本の知見とすり合わせを行うことにより進めていく。 (3)日本の37社の製造業に対しては,以前にアンケート調査を行っているため,これらのトップメッセージについて,池本が評価した「教師アリ」データーと,アンケート項目の中の非財務情報および統合思考の調査結果との関連付けを行って,統合報告書公表の企業像を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に,研究成果として刊行するための合宿での集中的な研究打合せが実施できなかったこと,また,当該研究に係わる国際的な動向について,国際的な学会への出席をもってフォローアップすることがコロナ感染拡大のために出席が叶わなかったことなど,旅費を中心に予定していた研究費の執行が行えなかった。 次年度においては,当該研究会を実施することで刊行物の完成度を上げることを図り,そしてオンライン開催の国際学会への出席を模索してみることにする。
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