研究課題/領域番号 |
19K02024
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
山田 純平 明治学院大学, 経済学部, 教授 (00407206)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 財務会計 / 国際会計 / Non-GAAP指標 / 資本会計 |
研究実績の概要 |
今年度は、Non-GAAP指標をめぐる日米の会計問題を中心に研究を行った。この問題は、特に米国において取り上げられており、その動向を「海外におけるNon-GAAP指標をめぐる動向」(『企業会計』2019年9月)として論文にまとめた。この論文を発表した後に、「増える独自の利益指標」(日本経済新聞、2019年9月20日)と「会計の未来国際会計基準10年上」という新聞記事のなかで、Non-GAAP指標に関するコメントが掲載された。 この論文とコメントのなかで、日本でもNon-GAAP指標の開示が問題視されつつあることだけでなく、米国とは異なり、日本特有の事情が存在していることを指摘している。つまり、日本では、IFRS採用企業と日本基準採用企業の比較可能性のためにNon-GAAP指標が用いられており、この点で米国の状況とは異なっている。今後は日米両国におけるNon-GAAP指標についてより詳しく取り上げる必要があると考えられる。また、本研究のタイトルからは外れるものの、欧州におけるNon-GAAP指標の適用も含めるとより立体的な考察が得られると思われる。 また、概念的な問題として、「資本概念の再検討」(明治学院大学経済学部ディスカッションペーパー)を公表した。このディスカッションペーパーは、近年の資本会計をめぐる議論において、2つの異なる資本概念が存在し、資本の側から財務諸表の構成要素を考えるアプローチがあることを示唆している。このディスカッションペーパーを内外の論文で公表したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はNon-GAAP指標に関する論文と資本概念に関するディスカッションぺーパーを書くことに時間をかけてしまったため、本研究の本来のテーマである日米会計基準の適用について広く研究することができなかった。そのため、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。 もちろん、Non-GAAP指標も資本概念も、現在の日米会計基準の適用を考えるうえで、重要なテーマのひとつではある。しかし、両基準の適用を広く比較するために、会計基準に関する新聞記事を集めて検討したり、日米の研究者や実務家にインタビューすることで適用上の問題点を拾い出すことを予定していたが、これまでのところ十分に実施できたとはいえない。さらに、日米の会計基準に詳しい研究者を招いて、所属する大学で研究会を開催したいと考えていたが、今年度はできなかった。 予算について、日米の会計基準の適用を知るために、新聞記事のデータベースを購入する費用や、国内や海外に出張してインタビューをするための費用、研究会を開催するための費用として考えていた。しかし、現在までのところ十分に利用できたとは思われないため、次年度からはこれらのために予算を可能な限り積極的に利用していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針としては、より広く日米会計基準の適用を検討するために、まずは日米の新聞記事から会計問題を拾い出し、問題点を検討することを行いたいと考えている。その際、両国において重要になるのは、IFRSをどのように取り入れていくかという国際対応の問題である。日本と米国で今後、IFRSとどのように折り合いをつけていくかが問われている。こうした対応について中心に日米の報道や環境をみていきたい。 そのうえで、可能であれば、日米の研究者や実務家へのインタビュー、所属大学における研究会の開催、米国の研究学会への参加を通じて、日米会計基準の適用上の問題点と両国の環境について考えてみたい。 ただし、後者のインタビュー、研究会開催、学会参加は、新型コロナウィルスの流行により制約される可能性がある。その場合は、前者の新聞記事を通じた検討に比重を置きつつ、ビデオ会議などで対応したいと考えている。 概念的な研究としては、会計の古典を再検討することを通じて、現在の資本概念や資産概念の特徴を示す研究を続けていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、今年度は、日米会計基準の適用を知るための新聞記事データベースを購入しなかったこと、日米の研究者及び実務家とのインタビューを行わなかったこと、所属大学において研究会を開催しなかったことがあげられる。次年度以降、新聞記事データベースを購入し、可能な限りインタビューを実施し、研究会を開催することとで、助成金を利用したいと考えている。
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