研究課題/領域番号 |
19K02024
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
山田 純平 明治学院大学, 経済学部, 教授 (00407206)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 財務会計 / 国際会計 / 資本概念 / 利益概念 |
研究実績の概要 |
第二年度にあたる今年度は、日米の資本・利益概念を再検討する作業を行った(そのひとつの成果として拙稿「資本・利益概念の再検討―Canningの学説と現代会計の課題―」『経済研究』第161号として公表した)。本稿では、アメリカの会計思想を代表するCanningの著作(The Economics of Accountancy)を取り上げ、同書のなかの資本・利益概念に照らして、現在の資本や利益の定義を再検討している。 こうした作業は、一見すると資本や利益のようなプリミティブな概念を取り上げているだけのように思われるかもしれない。しかし、資本や利益の概念や定義付けの問題は、具体的な会計基準の内容を大きく動かし、そこで得られる測定値に影響を及ぼしてくる。たとえば、最近は社会的な資本や利益を会計情報の一項目として取り上げようとする動きがあるが、少なくともCanningの資本・利益概念に従えば、社会的資本・利益は、会社を通じて所有者が手にするサービスとはいえないため、財務諸表における一項目にはなりえない。このように、資本・利益の概念は、現在の会計基準の見直しの際に、キーワードのひとつとなりえる。 また、第一年度に公表したディスカッションペーパー(「資本概念の再検討」明治学院大学ディスカッションペーパー)の内容を英訳し、海外ジャーナルに投稿した。最近の基準設定主体のなかで、資本を残余請求権として積極的に定義付けしようとする見解が出ているため、本ディスカッションペーパーで試みた、残余請求権としての資本を体系的に示した論文を海外の雑誌に公表することは意義のあることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、日米の研究者や実務家を招いた研究会を行ったり、インタビューを行うことを予定していた。ところが、昨年度からの新型コロナウィルスによる影響から、研究会やインタビューが出来なくなってしまった。そのため、本研究の課題である日米会計基準の適用問題を十分に検討することが出来ていない。 その代わりに、研究実績の概要で述べたように、日米会計基準の理論的な検討として、資本概念について取り上げた。 また、日米会計基準の環境として、監査法人に対する規制をテーマにした研究も始めているが、現段階では公表された成果は出ていない。第三年度に公表物として成果を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の状況から判断すると、今後一年間で、研究者や実務家を招いた研究会やインタビューを実施することは困難と考えられる。そこで代替的な手段として、今年度行った会計基準の理論的な側面を取り上げるだけではなく、オンラインのインタビューを行うことを考えている。オンラインのインタビューであれば、新型コロナウィルスの影響を受けることはないであろう。 来年度は最終年度になるので、これまで行ってきた理論的な検討、オンラインのインタビューによる実務的問題の提起、さらには日米の新聞報道からみた会計基準の適用問題をまとめる作業を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、日米の研究者及び実務家とのインタビューを行わなかったこと、所属大学において研究会を開催しなかったこと以外に、今年度は日米会計基準の適用を知るための新聞記事デ ー タベースを購入しなかったことがあげられる。次年度以降、新聞記事データベースを購入し、可能な限りインタビューを実施し、研究会を開催することとで、助成金を利用したいと考えている 。
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備考 |
上記ディスカッションペーパーを英訳して、海外のジャーナルに投稿した。
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