研究課題/領域番号 |
19K02024
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
山田 純平 明治学院大学, 経済学部, 教授 (00407206)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 会計基準 / 資本会計 / 国際会計 / 監査市場 |
研究実績の概要 |
2021年度は、論文1件(「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引について」『経済研究』(明治学院大学)第163号)を公表し、報告1件(「監査市場における競争の意義」第2回『企業会計』カンファレンス)を行った。 前者の論文は、会社法における資本制度の変化が、資本会計にどのような影響を与えたかについて検討している。会社法は会計基準にもっとも強く影響を与える法律である。そのなかでも、資本制度は資本会計に大きく影響を与えている。これまでの会社法では、新株を無償で交付することや労務を出資することに否定的な立場がとられていた。ところが2019年の改正会社法において、上場企業が取締役等の報酬等として株式を無償で交付することが可能とされた(会社法202条の2)。この改正により、会計基準の側でも対応が必要とされ、実務対応指針第41号が公表されている。拙稿では、この資本制度の変容により、会計基準上でこれまで前提とされてきた資本充実の原則が問い直されていることを述べた。 後者の報告(「監査市場における競争の意義」)では、監査法人間の競争が必要なのかどうかを検討している。現在のところ、Big4と呼ばれる4大監査法人(日本では事実上3大監査法人)の間で監査市場が寡占になっているため、もっと競争が必要であるといわれることがある。そこでは、上述のように、大企業の監査を担当する監査法人の数が少なく、競争状態にないことが問題視されている。このことは、日本にもあてはまる。そこで本報告では、4大監査法人の一角を占めていた中央青山監査法人(のちのみすず監査法人)が事実上解散し、大手監査法人の数が減ったときに注目して、競争の度合い(具体的には監査報酬)が変化しているかを検討した。その結果、大手監査法人が4つから3つに変化してもそれほど変化がなかったことが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での研究活動が続き、当初予定していた研究計画を大幅に変更せざるをえなくなった。当初は、国内外の会計専門家にインタビューをしたり、あるいは専門家を招いて研究会やシンポジウムを開催することを予定していた。ところが、コロナ禍で人の行き来ができなくなったため、それらの活動を断念せざるをえなくなった。 その代わりに、オンラインでのインタビューを行ったり、オンラインでの研究会に参加するように努めた。また、海外ジャーナルの投稿も行った。しかし、日米の会計基準を適用状況を調査するという点では、やや遅れているといわざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
今後も海外から研究者を招くことは難しいと考えられるので、オンラインでインタビューをしたり、研究報告をすることを通じて、本研究をまとめる方向で進めていきたい。具体的には、Non-GAAP利益や資本制度、監査制度などが日米の会計基準適用にどのように影響を与えているかについて考察し、それらを論文として公表することとしたい。また、これまで行ってきた研究テーマのなかから、海外ジャーナルに投稿を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍での研究活動が続き、当初予定していた研究計画を大幅に変更せざるをえなくなったため、次年度使用額が残った。当初は、国内外の会計専門家にインタビューをしたり、あるいは専門家を招いて研究会を開いたりすることを予定していた。ところが、コロナ禍で人の行き来ができなくなったため、それらの活動を断念せざるをえなくなった。 今後の使用計画としては、オンラインでインタビューを行ったり、これまでの研究活動をまとめて、英語論文として公表することを考えている。
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