わが国地方自治体における内部統制の構築は、都道府県と政令指定市に対して地方自治法第150条が求めている制度である。他方で総務省は、新地方公会計改革と公共施設の総合管理計画の策定を通知等で求めており、これらを総合的に斟酌した内部統制の構築が求められているところである。 先行研究ではこれらの諸問題を主として財務的業績評価の視点から捉え、財務事務執行リスクを中心とした内部統制の構築のロジックが模索されてきた。本研究も当初はそうした視点からの研究計画を予定していた。しかしながら、先行文献の渉猟と地方自治体の内部統制関係者に対するヒアリングの結果、内部統制を財務的な視点に限定して展開するのはあくまでも実務的な要請(制度導入の初期段階ゆえに)によるものであり、学術的考察としては、財務的な業績に集中して内部統制の問題を取り扱うことは、誤りであることが確認された。 もとより、地方自治体のミッションの多くは、単に均一なサービスを中立的に提供すれば済むというものではなく、住民あるいは受益者の個別的な事情に寄り添って、オーダー・メイドのサービスを提供すべきものが少なくない。この場合には、単に財務的効率性や財務的リスクに傾注した内部統制のロジックでは不十分なことは明白である。 それゆえ本研究では研究方法の見直しを行い、当初の研究目的を実現するための最も根底となる行政サービス手の提供におけるロジックとは何かを模索し、その結果、Stephen Osborne 教授によるPublic Service Logic にたどり着いた。 本研究の成果としては、このロジックを取り上げた英文の翻訳と考察を行い、その結果は、日本語の翻訳本として編集し出版されている。これにより本研究の成果は、学会だけではなく社会にも大きく還元されることになる。
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