研究課題
基盤研究(C)
20世紀の日本社会において、天皇家に関連する出来事をニュース映画として映像化・商品化する経済主体の動向は、人びとのナショナル・アイデンティティ編成にとってどのような契機を構成していたか。本研究では、この問いについて社会学的な視点から調査分析を行った。この作業を通じて、映画媒体による天皇体験の拡がりが、君主制ナショナリズム形成にとって反撥的に作用したことをあきらかにした。
社会学
社会学や歴史学の研究史では一般に、20世紀の映画会社や新聞社やテレビ局が公開した皇室関連のニュース映画・映像は、天皇家をシンボルとした国民的帰属意識の喚起と編成に大きくくみした媒体であったとかんがえられてきた。対して本研究では、20世紀の天皇実写映画の上映・鑑賞の微視的相貌について調査と検討を加えることによって、ニュース映画やテレビを媒介した複製的で間接的な皇室体験の定着が、むしろ天皇家の民族的シンボル性が社会的に捨象・閑却される事態へと帰結したことをあきらかにした。