研究課題/領域番号 |
19K02056
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岸 政彦 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20382004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 沖縄戦 / 沖縄 / 生活史 / 社会学 / ライフヒストリー |
研究実績の概要 |
2019年4月、6月、8月(2回)、9月、10月、2020年2月(2回)、3月の9回にわたり沖縄本島各市町村を訪問し現地調査にあたった。県内各市町村の老人クラブ連合会やメディア関係者などと協力しながら、十数名の沖縄戦体験者から、戦前から沖縄戦と占領期を経て今日にいたるまでの生活史を聞き取った。2020年に入ってからは、新型コロナウィルスの感染拡大のため、死亡率が特に高い高齢者に対する聞き取り調査は自粛した。しかし、それまで実行した聞き取りにおいて、今回もまた概ね以下のような点についての語りを聞き取ることができた。あらためて、沖縄戦と戦後の社会変動について理解できたと思う。 (1)沖縄戦直前の、日本軍による個人や村の財産の接収・占有・独占的使用。これは沖縄の住民の私的財産権の侵害ともいえる。(2)激化した地上戦のもとでの、家族解体と逃避行。住民たちは財産や家族から切り離され、ほとんど体ひとつで逃げざるを得なかった。ここにおいて沖縄における一切の所有権が解体される。(3)逃避中は、通りがかった他人の家や畑から盗んだ芋や砂糖黍を食べることで飢えをしのいでいた。空襲や艦砲射撃をかいくぐって逃げている最中に、そのような行為は特に逸脱とはみなされなかった。(4)戦争が終わって捕虜になったとき収容所に収容されることになったが、そこから出て民家に住まわされることも多かった。そのほとんどは個人所有の家屋だったが、米軍が強制的に接収し、ほかの住民を強制的に住まわせていた。(5)戦争が完全に終了して占領期が始まり、住民たちも基地内の軍作業などの仕事に就くようになると、基地内の食料や物資を勝手に持ち出して、飢えをしのいだり、売りさばいて生活の足しにすることが多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年の春休みに集中して聞き取りをおこなう予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大のため、沖縄県内における高齢者対象の調査は、20年2月以降は自粛せざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大の収束を待って調査を再開したい。それまでは沖縄戦に関する基礎的な文献と資料を収集せざるをえない。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大のため、高齢者を対象とした聞き取り調査を自粛したため、繰越し金が発生した。次年度使用額は沖縄調査の旅費などで使用する予定である。
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