研究課題/領域番号 |
19K02060
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
坂本 真司 大手前大学, 総合文化学部, 准教授 (20425094)
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研究分担者 |
松崎 行代 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (60465854)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域婦人活動 / 生活改善運動 / 文化芸術サークル / 地域おこし / 女性の地位向上 / 人形劇 |
研究実績の概要 |
2019年度に本共同研究は大きく2つのことに取り組んだ。ひとつは生活改善運動に取り組んだ農村女性への聞き取りと、関連データの収集である。もうひとつは、中高年女性たちの人形劇サークル活動に関する、参加者たちへの聞き取りを中心とした調査である。 生活改善運動経験者への調査は、三重県伊賀市で研究代表者坂本が主に実施した。2017年からの同市内坂下地区での聞き取り調査を継続的に進めた。地域おこし事業の実態をめぐり、事業への女性の関わりを軸に、地区での女性の地位構造を調べた。女性インフォーマント1名へのインテンシブな聞き取りと、村おこしに関わった男性住民からの情報収集をしながら調査を進めた。また本共同研究から新規に、同市内柘植地区の被差別部落居住者女性5名を対象に聞き取りを始めた。今後はインテンシブな聞き取りと、地区の部落差別の実態に関する綿密なデータ収集をすることで、被差別部落と非被差別部落の場合での、農村女性の地位向上に関する生活改善の作用について、比較的な研究を進める。 一方で人形劇サークル活動の調査については、研究分担者の松崎が中心に進めた。本年度は3地区で現地調査を実施した。人形劇を例に、ジェンダー構造をはじめとする地域社会構造が、地域文化の確立に及ぼす作用を研究するためのデータ収集に努めた。1つめは、日本の人形劇文化の中心地である飯田市で、劇団「東野人形劇あかね」を例に、活動状況や、参加者女性の地域活動への姿勢について、5名のメンバーに聞き取りほか調査をおこなった。2つめは都市部の例として、大阪府枚方市の劇団「姉御」の活動について、代表者への聞き取りと関連データの収集を行った。3つめは、農村部の例として、秋田県大潟村の「八郎」の活動について、劇団メンバー7名に聞き取りをしたほか、村長経験者である劇団代表からは、村の文化行政における人形劇の位置づけについても情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大問題の影響から、本共同研究では、2020年2-3月に集中的に予定していた現地調査を延期する事態となった。生活改善運動経験者女性を対象とした調査では、インフォーマントの出身地や、嫁入り前に暮らした地域での関係者への聞き取り調査を予定していた。一方で、人形劇サークルの調査では、調査研究の一環として、各地域から劇団員を集めた公開型シンポジウムを2020年度中に開く計画を当初より立てており、その準備として、聞き取り調査と同時に現地劇団メンバーとの会合を行うことになっていた。しかし上記感染拡大問題から、研究者2名の移動の困難に加え、現地での受け入れ(本メンバーはいずれも感染問題深刻地域の大阪府下居住者である。現地の高齢者との接触は非常に危険でもある)も容易でなくなった。以上の事情から、調査研究は現在顕著に滞っている。 また2020年度の調査研究に関しては、感染拡大問題の収束が未だ不透明であることから、さらなる遅れが必至とみられる。目下今後の現地調査の時期をどうするか再検討の必要がある。また上記シンポジウムに関しては、本共同研究計画時から、2020年8月開催予定だった「いいだ人形劇フェスタ2020」内で実施の計画であったが、フェスタそのものが中止になった。サークル参加者や関係者の討論からデータを得ると同時に、今後の調査展開の足掛かりを築く意味で、シンポジウム開催は本共同研究で大きな意味をもつ。今後は、シンポジウム開催の機会を再検討する、あるいはシンポジウムに代わって、今いったような狙いにあてはまる代替え的な活動が可能かどうかを早急に吟味する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べたとおり、本共同研究は、新型コロナウィルス感染拡大問題の影響を強く受けて進行が大幅に遅れており、今後遅れはさらに広がるとみられる。さしあたりは、収束時期に関わらず、2020年度で進めたい調査研究活動を、優先度の高いものから順にあげ、その方法や問題点をあげておく。 生活改善運動経験者女性の調査については、経験者女性の出身地ならびに嫁入りまでの居住地において、親族ほか関係者を対象にして、過去の生活の実態について聞き取りをおこなうとともに、図書館ほか施設において、郷土資料を中心とした関連情報を収集する必要がある。またそれと同時に、2019年度に開始した被差別部落女性たちのケースについては、当事者女性たちへの聞き取りを中心に、調査を途絶えさせず、継続させる必要がある。 人形劇サークル参加女性の調査に関しては、計画している当事者ならびに関係者によるシンポジウムの開催が重要課題となる。そのために、現地劇団メンバーとの会合を重ねる必要があるが、移動困難な場合は、Zoomなどのインターネット遠隔会議サービスを利用するなどして、可能な方法を模索し、対象者の協力を仰ぐことも考えている。現地でハードウェア環境を整えてもらえるかどうか、本共同研究でどのぐらい設置に貢献できるか検討していきたい。このような遠隔操作でのコミュニケーションを用いた調査の可能性についてだが、先に示した生活改善運動経験者女性の調査の場合は、非常に困難だと認識している。関係者対象の聞き取りでも、当のインフォーマントは高齢者の場合が多い。端末の操作において多大な負担をかけることが必至である。ゆえに当該調査に関しては、感染問題の収束をまち、先方の承諾を得た上で調査者が現地に赴く形をとらざるを得ないと認識している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大問題の影響から、本共同研究では、2020年2-3月に集中的に予定していた現地調査を延期する事態となった。特に人形劇サークル調査に関しては、2019年度での未使用額が少なからぬものとなった。現地調査ならびに2020年度開催予定としていたシンポジウムにあたっての事前会合について、現地協力者と調査者とのスケジュール調整から、年度末の2-3月での入念な実施を予定していた。そこに感染問題が重なってしまい、会合を含めた現地調査を断念せざるをえなかった。感染問題の収束時期によって実現可能性が変わっては来るが、現時点では、2020年度において、開催に向けた会合を含めた現地調査を再開させなければならないと認識している。先に「今後の研究の推進方策」でも述べたが、遠隔式での会合や聞き取りが可能となった際には、ハードウェアの用意ほか費用発生の可能性もある。そこで2019年度の未使用分を適正かつ効率的に活用したいと考えている。
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