研究課題/領域番号 |
19K02107
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
角田 隆一 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (80631978)
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研究分担者 |
木村 絵里子 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (60710407)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 個人化 / 写真の社会学 / 写真コミュニケーション / 現代日本写真 / セルフ・イメージ / ライフスタイル・イメージ / 自己 / 再帰性 |
研究実績の概要 |
今年度も、昨年度に引き続いて、Zoomを用いた研究会を複数回設け、研究代表者と研究分担者各自が進めている担当研究作業の進捗状況を発表して討論を積み重ねることで、各研究の質を高めていった。 本研究の目的は、本格的な個人化社会の到来という認識のもと、現代の写真文化を、「自己メディア」(自己の維持のためのメディア)という枠組を用いながら、その現代社会論的意味を探究することである。前年度はこれを目的として様々な雑誌や表象を対象に広く目を配って検討した結果として、90年代後半(とりわけ2000年代)以降における「自己」の性格の明確な変化が仮説的に見出された(この時期に「盛る」「映える」「エモ」など美的/感覚的な語彙のもと写真文化が展開)。A. ギデンズやS. ラッシュらの議論を踏まえれば、それは「自己の再帰性」の変化(「認知的再帰性」から「美的再帰性」へ)として解釈することもできる。その仮説のもと、今年度はとりわけその「美的再帰的自己」の具体的様相を雑誌の内容分析を通じて探ることを主眼とし、美的再帰的自己へと向けられた[ライフスタイル・イメージ]の内実を探るための資料として『GENIC』、[セルフ・イメージ]の内実を探るための資料として『小悪魔ageha』や『non-no』などを中心に内容分析を試みた。 これまでの研究成果の主要な一例としては、現代社会において写真は、「自己メディア」としてその社会的機能の中身を変化させつつあることを見出した点がまず挙げられる。すなわち、今日写真は、言語=物語的に構築される自己を支えるメディアとしてよりは、むしろ美的センスや雰囲気によって醸し出されるような自己(「美的再帰的な自己」)を支えるメディアとして積極的に用いられつつある。この変化に関するより深く掘り下げた分析やその理論的意味の考察については現在鋭意進行中であり、近く論文等の形で明らかにする。
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