研究課題/領域番号 |
19K02189
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
樋澤 吉彦 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10329352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会復帰 / 精神保健医療福祉 / 精神保健福祉法 / 触法精神障害者 / 医療観察法 / 精神保健福祉士 |
研究実績の概要 |
令和元(2019)年度は、研究計画における「当該年度」の「具体的研究課題」の「到達目標」のうちの4点(①精神障害者の社会復帰概念についての社会福祉分野ににおける論考の集積、②精神保健福祉領域におけるソーシャルワーク専門職である「精神保健福祉士」(PSW)の職能団体である「日本精神保健福祉士協会」(協会)が、その発足の段階から「社会復帰」をどのような概念として捉えてきたのかを明らかにするための協会による発行物、及び協会関係者による論考の集積、③医療観察法において主としてPSWが担うことになった保護観察所における社会復帰調整官の業務の性質に関する資料及び論考の集積、④2016年に発生した障害者等殺傷事件(「事件」)を契機として主に「措置入院」とその解除後の「アフターケア」の強化が盛り込まれたうえで国会上程されたもののいったん廃案となった2017年改正法案策定までの各種検討会及び審議会における議事録の整理検討、及び関連資料の集積)の作業及び、特に①及び④に関する成果報告を行った。 前者の「作業」については、概ね順調に行われたものの、②の協会発足当時の発行物については収集が困難であった。 後者の「成果報告」は、論文3報、学会報告1報という形で発表した。学会報告及び論文のうち2本は上記④に関するものであり、「事件」後に提案審議された精神保健福祉法改定案(後に廃案)に関連して、協会がいかなる論理で排他的職能を獲得しようとしているのかについて、医療観察法制定時の議論との「相似性」をふまえて、その是非とともに論じたものである。他方、別論文1報は、上記①及び③に関するものであり、当面、執筆時点において収集・整理した論考及び資料をまとめたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初研究計画に即せば、令和元(2019)年度は「研究実績の概要」で述べた4点についての「集積」が主であり、その点において概ね順調に進展している。 ただし、やはり上述の通り、協会発足当時の発行物については収集が困難であったため、令和2(2021)年度以降はあらためてその収集可能性も含めて再検討を行う必要がある。また上述の「事件」に関する情報公開請求については、関連NPOに問い合わせまでは行ったが、請求手続きまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和2(2021)年度は、引き続き「研究実績の概要」で述べた4点についての集積とそれにもとづく成果報告を行う予定である。具体的には、協会が精神保健福祉士(PSW)略称を“Mental Health Social Worker”(「MHSW」)へと変更しようとしている点について、精神保健福祉士の法制定時の根拠(すなわち「社会復帰の促進」という立法事実)をふまえて、精神保健福祉に関するデータの変遷をもとに、略称変更の妥当性について整理検討を行う予定である。 但し本報告書執筆時点において、いわゆる新型コロナウイルス蔓延とその対策に伴い、各種学会等が中止もしくは次年度以降に延期の方向で検討されているため、今年度は論考執筆のための資料収集に留まる可能性が高いことをあらかじめ述べておきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「物品費」(書籍)および「その他」(文献複写)として活用する予定であったもののうち、一部の入手が当該年度内に困難となり、上記の余剰が発生したものである。 当該余剰金は「物品費」(書籍)及び「その他」(文献複写)に充てる予定である。
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