研究課題/領域番号 |
19K02265
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉岡 洋子 大阪大学, 人間科学研究科, 特任准教授 (80462018)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 要支援 / 子ども / 家庭 / 予防型 / スウェーデン |
研究実績の概要 |
本研究は、予防的かつ家庭支援重視のアプローチによる豊富な在宅型サービスを大きな特徴とするスウェーデンでの要支援の子ども・家庭への支援に注目し、効果的な予防型支援のあり方を探求するものである。以下の①~③の三つの側面で進めており、それぞれに関する2019年度の進捗は次の通りである。 ①「概念理念、法制度上の位置づけの明確化」の部分は、徹底的な文献資料の調査により大きく進展することができた。既存の法制度の整理に加えて、ごく近年進展している予防型アプローチの更なる促進政策を、社会庁や公衆衛生庁の最新の報告書等から見出した。さらに、現状形成に至る歴史的背景の理解が不可欠と考えたことから、スウェーデン語・英語での重要文献を国内研究協力者らと共に読み進めている。②「行政・市民社会による多様な事業実践の内容・方法・効果の明示」については、特に子ども福祉財団が全国研修を行っている実践モデルについて、枠組みを整理した。暴力をふるってしまった親への治療プログラム、離婚後の子ども・親へのプログラム等が強調されていた。③「一般の子育て支援策、在宅型サービス、社会的養護の連続性の視点からの考察」については、上述の文献調査を通して現地で基盤となっている考え方・理論を把握することができ、今後の考察に向けた土台を形成した。以上の三点に加えて今年度、日本国内の現場実践者や、スウェーデンと同じく家庭支援型アプローチのヨーロッパ諸国を研究する研究者らと連携を深め、今後の研究発展に向けて重要なネットワークを形成することができた。なお、研究成果の公表は、日本地域福祉学会、日本社会福祉学会、北ヨーロッパ学会での口頭発表の他、研究紀要と学術誌への論文投稿として行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2019年度)は、次の二つの理由から元々予定していた現地調査を延期したが、全体としては概ね順調に進展している。調査延期は、第一に、海外研究協力者の来日機会があり、日本において十分に議論を行うことができたと同時に、大きな制度改革の年度にあたり主要な政府報告書が複数刊行されたため、調査前にその分析に注力することにしたためである。これらを通して、次年度実施する現地調査の準備を万全に整えることとした。第二に、日本国内での子ども家庭支援を行う民間団体や研究者とのネットワークを広げることができたため、そこでの連携と実態理解に注力したためである。この機会をとらえ、初年度に日本と海外の比較に関わる理論部分の検討を予定以上に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
上述(進捗状況)のとおり、2019年度は2年目以降に質の高い現地調査を行う準備を十分に整えることができた。また文献資料調査に注力したため、理論的な面ではむしろ予定以上に進行している。 これを土台として、2年目(2020年度)は、スウェーデンの基礎自治体における、要支援の子どもと家庭への予防型での在宅型の支援の実際を明らかにするため、基礎自治体の子ども家庭福祉部門の責任者とソーシャルワーカー、また民間団体へのインタビュー調査を行う。当該分野での北欧諸国の研究大会にも参加する。ただし、新型コロナウィルスの影響で、現地調査の具体的日程調整ができない状態であり、参加予定だった研究大会も延期となったことから、今後の計画変更も想定する必要が生じている状況である。現地研究者らとメール等で密接に連携を取りながら、状況に応じて今できる最大限の形で研究を進める。3年目は最終年度であり、総合的な考察を行い成果の一部を学会誌等で公表すると共に、現地研究者を招へいして日本で国際セミナーを開催できるよう、準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外研究協力者らとも相談した結果、今年度予定していたスウェーデンでの現地調査を翌年に延期して、2019年度は理論面を中心とする調査準備に徹底的に注力することにした。ゆえに次年度使用額は、2020年度じゅうに行う現地調査経費として用いる計画である。
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